研究課題/領域番号 |
21K04221
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
三方 康弘 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60434784)
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研究分担者 |
麓 隆行 近畿大学, 理工学部, 教授 (30315981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ASR / 材料劣化のばらつき / X線CT撮影 / 曲げ試験 |
研究実績の概要 |
アルカリシリカ反応(以下,ASR)劣化を生じたコンクリート部材では,載荷によるひび割れとASR劣化によるひび割れが繋がることにより,損傷の局所化が発生することにより,部材の耐荷特性に影響を及ぼすことから,材料劣化の空間的ばらつきを考慮した構造性能評価手法の構築が望まれている.そこで,以下の検討課題について取り組むことを目的とした. (1)X線CT撮影により部材内でのASRによる材料劣化の空間的ばらつき要因の把握と空間的ばらつきの評価指標を提案する.(2)材料劣化の空間的ばらつきが耐荷特性に及ぼす影響について把握する.(3)ひび割れの評価指標に基づいたASR劣化コンクリートの圧縮モデルを提案する.(4)材料劣化の空間的ばらつきを考慮した構造性能評価手法を構築する. 2021年度は,下記に示すASR劣化を生じたはり供試体の製作を行い,ASR膨張の計測を開始した.なお,あらかじめコアを採取する位置を想定した上で,はり供試体を製作した. 1. はり供試体による検討では,サイズの異なる3種類 小型供試体,中型供試体,大型供試体のはり供試体を用いる.小型供試体はモルタル供試体とし,供試体全体に対してX線CT撮影を行い,ASRによるひび割れが鋼材による拘束を受けた場合の進展状況を経時的に把握する.なお,中型供試体は,経時挙動観察用供試体と曲げ載荷試験用供試体を製作する. 2. シリンダーによる検討では,採取したコアを用いてX線CT撮影によるASRひび割れを三次元的に把握しシリンダー内部のASRひび割れの評価指標の提案を行う.その後,シリンダーの圧縮試験を実施し,圧縮強度,ヤング係数,圧縮破壊エネルギーを把握し,シリンダー内部のASRひび割れがコンクリートの圧縮強度特性に及ぼす影響を把握する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ASR劣化を生じたはり供試体とシリンダーによる検討を行う.はり供試体による検討では,サイズの異なる3種類 小型供試体(断面幅70mm×高さ70mm,全長204mm),中型供試体(断面幅200mm×高さ200mm,全長1800mm),大型供試体(断面幅200mm×高さ500mm,全長3600mm)のはり供試体を用いる. 2021年度は反応性骨材(輝石安山岩)を用いた小型供試体と中型供試体を製作した.なお,ASR膨張をコンクリート内部の鉄筋のひずみから長期間にわたって計測するために、溶接ゲージを用いて鉄筋に点溶接にて接合した.28日養生(温度20℃、相対湿度90%)後に、コンクリート表面にコンタクトチップを添付し、コンクリート表面の膨張挙動の初期値を計測した.また,鉄筋のひずみの初期値を計測した. 初期値計測後に,ASR膨張を促進するための促進養生(温度30℃,相対湿度90%)を実施した.現在は製作した供試体のASR膨張の経過観察を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に小型供試体と中型供試体の載荷試験を実施予定である. その結果から材料劣化の空間的ばらつきが耐荷特性に及ぼす影響について把握する.また,シリンダーによる検討では,採取したコアを用いてX線CT撮影によるASRひび割れを三次元的に把握し,シリンダー内部のASRひび割れの評価指標の提案を行う.その後,シリンダーの圧縮試験を実施し,圧縮強度,ヤング係数,圧縮破壊エネルギーを把握し,シリンダー内部のASRひび割れがコンクリートの圧縮強度特性に及ぼす影響を把握する.上述のASRひび割れの評価指標を用いたASR劣化コンクリートの圧縮モデル(構成則)の提案を行う. 上記の検討結果から,提案した材料劣化の空間的ばらつきの評価指標とASR劣化コンクリートの圧縮モデルを用いた非線形有限要素解析を行い,解析モデルと実験結果の整合性の検証を行う.検証結果を踏まえて,材料劣化の空間的ばらつきを考慮した構造性能評価手法の構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
小型供試体の製作精度の向上に向けて,2021年度の実績を踏まえて2022年度の供試体製作に活かすことから,2021年度製作予定であった供試体の一部を2022年度に製作する予定である.
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