本研究では,ASR劣化がRCはり部材の耐荷特性に及ぼす影響を把握することを目的として,ASR膨張の経過観察及び載荷試験を実施した.小型供試体は幅100mm×高さ200mmの長方形断面,大型供試体は幅200㎜×高さ200㎜の正方形断面とし,いずれも全長1800㎜のRC単純はり部材を製作した.なお,はり部材のかぶりコンクリートとコアコンクリートでは,ASRによるひび割れの発生状況が異なることが想定されるため,作製した全てのRCはり供試体から採取したコンクリートコアにX線CT撮影を行い,コンクリート内部のひび割れ状況を把握した.なお,本研究の成果を下記に示す. (1) 載荷試験では,小型供試体においてASR劣化を生じたせん断補強筋を配置しなかった供試体において,主鉄筋位置に生じていたASRひび割れが載荷によりさらに開口し,割裂ひび割れが発生した後,せん断引張破壊に至り,普通コンクリート供試体とは破壊形式が異なった.大型供試体においていずれも曲げ引張破壊に至った.せん断補強筋を配置した場合にはASRひび割れはあまり開口せず,普通コンクリート供試体とほぼ同様の挙動を示した.一方,せん断補強筋を配置してない場合にはASRひび割れにせん断ひび割れがつながる挙動を示した. (2) X線CT撮影では,大型供試体においてASR劣化を生じたはり供試体から採取したコアの内部ひび割れの観察結果から,断面中央部分のコンクリートはかぶりコンクリートと比較して,ひび割れ密度が小さくなる傾向を示した.このことから,部材の断面において内部と表面部ではASRひび割れの進展状況に違いが生じていることが確認された.また,荷重によるひび割れと並行した微細なひび割れが多く確認され,ASR劣化によって生じていたひび割れが載荷によりさらに拡大した場合もあると考えられる.
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