研究課題/領域番号 |
21K04225
|
研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
津田 誠 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60818566)
|
研究分担者 |
西澤 辰男 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 客員研究員 (00143876)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ASR / 地中構造物 / 地下水 / 暴露試験 / 膨張率試験 / イオンクロマトグラフィー / 偏光顕微鏡 / 蛍光顕微鏡 |
研究実績の概要 |
日本各地にてアルカリシリカ反応が報告されている中,その多くが地上部分に限られている.しかし,地上部の損傷程度が小さい橋脚において,地中部のフーチングにて激しいASR劣化が判明した.さらに折り曲げ部にて鉄筋の切断が確認された。また、小学校の校舎基礎部ではひび割れ幅が3mmを超える大きなひび割れが網の目状に発生し、これら不可視部のASRによるリスクが考えられた。このように可視部と不可視部にて健全性が大きく異なる構造物が潜在的に一定数存在していると考えられる. 本研究では研究ではASR促進養生試験としてASRが発生した位置で採取済の土を使用し、地中環境を再現した条件にて試験を実施する。供試体はモルタルバーとコンクリートプリズムを用いる。地中部での月単位で変動する地下水の影響や乾湿の繰り返しを再現するため月単位で養生土の飽和度を変化させた実験を行う。 実験は土壌の種類や地下水変動、骨材の種類などの条件を組み合わせたケースにて行い、さらに、土壌や供試体から溶出した各イオンを合わせて測定する。 また、フライアッシュを混和した供試体を用い、終了後に薄片を作製し、偏光顕微鏡や蛍光顕微鏡観察を行い、反応性岩種と反応性鉱物の同定、アルカリシリカゲルの生成とひび割れの発生状況を観察する 実験の結果、セメント単味のケースでの膨張率の推移は反応性骨材および非反応性骨材とも比較的大きな膨張があり, 途中の経過についてもほぼ同様の膨張挙動であった。また,同じ40℃の試験温度であるJIS A1146のモルタルバー法よりも,大きい膨張率を示し,その理由として供試体周辺の砂質土や供試体からのアルカリの溶出が考えられる結果を得た。また、偏光顕微鏡観察による結果、反応性骨材を使用したケースでは巨視的はひび割れが少数発生するのに対し、非反応性骨材を使用したケースでは微細なひび割れが多数生じることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASR促進膨張量試験についてはモルタルバーを用いた実験についてはほぼ順調に実施している。実験ケースについては当初の計画にあった養生槽を用いてのASR促進膨張量試験に加えて、屋外での暴露試験のケースも新たに追加した。さらに、膨張試験にて使用した供試体を用いて、岩石学的検討として偏光顕微鏡観察を実施した。一方で、コロナ禍による人員不足の関係でコンクリートプリズムによる実験については今年度の予定を来年度とした。力学的性質の試験として、共鳴振動による動弾性係数の変化を測定し、ASR膨張と力学的性質の変化についての検証を行った。合わせて弾塑性FEM解析により実測の再現について実施することで、モデルを構築予定としている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、ASR促進膨張量試験については、長期養生による検証を行うため、人工的に作成した異なる地中環境下として湿度を固定しての湿潤条件での膨張量試験を実施する。また、供試体をモルタルバーに加えてコンクリートプリズムも追加し実施するものとする。力学的性質の試験については、前年度と同様にASR促進膨張量試験の供試体にて実施するものとし、新規のコンクリートプリズムの供試体についても動弾性係数を求めることとする。 化学分析についてはイオンクロマトグラフィーを用いて、各養生条件の供試体および土壌から溶出するイオンについて分析を行う。 岩石学的調査として、長期養生後の供試体にて蛍光顕微鏡および偏光顕微鏡観察を行い、供試体内部のASR反応性の違いについても調査する。 さらに、室内試験結果および橋脚補強効果の検証のために実施しているモニタリングデータを用いて、弾塑性FEM解析を実施しASR膨張と補強効果について検証し、全国で実施可能な補強工法について提案を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の流行により、一部の室内実験に遅延が生じたため
|