本研究は、コンクリート構造物の合理的な予防保全型維持管理体系の確立を支援することを意図し、高度ロボットセンシングシステムを構築し、実構造物の品質・状態のバラツキを把握するとともに、その活用法を見出すことを目指している。研究の3本柱として①ロボットセンシング技術の開発、②構造物中の劣化リスク分布の評価、③品質・状態のバラツキ成因分析を挙げ検討を進めている。 令和3年度の検討では、コンクリート壁面を高速移動かつ安定した静止吸着が可能なロボットとして、ブロワー排気・真空ポンプハイブリッド壁面移動ロボットを開発した。令和4年度は、鉄筋コンクリートの耐久性を左右する支配因子として鉄筋かぶりに着目し、その非破壊測定が可能な非破壊試験装置のうち比較的小型軽量である電磁誘導型鉄筋探査装置の搭載方法を検討し、ロボットの改良検討を行った。 令和5年度の検討では、委員長を務める日本非破壊検査協会コンクリート含水率試験研究委員会における議論を参考として、電磁波レーダ法鉄筋探査における比誘電率の推定法を利用したコンクリートの含水率分布の可能性を検討した。具体的には、市販されている1kg程度の電磁波レーダ試験装置を搭載できるようなブロワー排気型壁面移動ロボットへと再改良を行い、電磁誘導法等で測定される鉄筋かぶりの値を用いて、コンクリートの含水率と強い相関がある誘電率を広範囲かつ効率的に推定可能な非破壊試験ロボットを新たに開発した。
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