• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

レーザー超音波可視化試験に対するデジタルツイン非破壊評価の構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K04231
研究機関群馬大学

研究代表者

斎藤 隆泰  群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00535114)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード深層学習 / 機械学習 / 時間反転法 / レーザー超音波可視化試験 / デジタルツイン / 人工知能 / 超音波シミュレーション
研究実績の概要

本研究は,申請書に書かれているように4つの研究目的と内容に分かれている.当該年度の実績を,各項目毎に記述する.
A)デジタルツインのための弾性波動伝搬シミュレーターの開発:アイソジオメトリック解析を用いた時間領域境界要素法を作成し,高度化することを行った.また時間反転法収束のための超音波シミュレーションコードも作成した.
B)弾性波動伝搬シミュレーターによるビッグデータ生成:上記A)等で開発した弾性波動伝搬シミュレーターを用いて,仮想空間上での超音波シミュレーションを多数回実行し,後のC),D)等で援用できるようなビッグデータを作成した.これらはデータの増強を目的としていることもあり,1年目から適宜行っている.
C)レーザー超音波可視化試験(LUVT)とAIの融合:LUVTでは,レーザー照射面における超音波伝搬を可視化することができる.そこで,本研究では,これら可視化結果を大量に集め,それらの深層学習を行うことで,LUVTにAIを融合させた.ただし,学習データは,適宜,データ拡張を行うことで,データを増強している.まだVGG16やResNet等の,既存の画像認識で使われた重みを利用する転移学習やファイチューニングを行うことで,AIの高度化を図った.本結果は論文に投稿・掲載され一定の成果を得いている.
D)AIを活かした逆解析手法の開発:先進超音波探傷法の1つとしてアレイ探傷法が知られている.アレイ探傷法は,複数の素子で超音波を送受信することができ,効率的に検査を実施することができる.本研究では,2次元スカラー波動問題や,2次元異方性面外波動問題等を対象に,A), B)で開発した弾性波動伝搬シミュレーターを用いてアレイ探傷法に対する数値シミュレーションを行い,それらの結果を深層学習させることで欠陥の位置や大きさを推定するAIを開発した.論文に投稿・掲載され,一定の成果を得ている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績概要と同様に,4つの各項目毎に進捗を説明する.
A)デジタルツインのための弾性波動伝搬シミュレーターの開発:アイソジオメトリック解析を用いた超音波シミュレーションは,2次元スカラー、2次元弾性波動問題まで行っている.そのため,当初の予定は概ね達成されている.
B)弾性波動伝搬シミュレーターによるビッグデータ生成:一般的に,深層学習や機械学習では,データが多ければ多い程よい.そのため,本項目におけるビッグデータの作成については,終わりは存在しないが,実用的な範囲内におけるデータの増強は,本年度も実行できたと考えている.
C)レーザー超音波可視化試験(LUVT)とAIの融合:実際の計測実験で得られた結果および数値シミュレーションで得られた結果の両者に対するAIを作成し,いずれも良好な結果を得ている.また,それらデータを合算させて学習に使用したり,転移学習を行って,高度化も図っている.手法としては,既に3年間の目標を達成しており,当初の計画以上に進展していると判断できる.
D)AIを活かした逆解析手法の開発:今年度予定していた研究は順調に消化し,深層学習を用いて欠陥の大きさや位置を推定することができている.また,査読付き国際会議等にも結果は投稿しており,本項目も順調に進展していると言える.以上A)-D)の項目を順調に実施することができたが,本年度も,予定していた国際会議や,一部の国内学会等で発表できなかった.その分の旅費を翌年度に繰り越しているため,2023年度に成果発表を行う予定でいる.また,D)では欠陥の大きさや位置を推定するために,人工知能の基礎である深層学習を用いたが,このような逆問題のみならず,B)等の超音波シミュレーションといった順解析に深層学習を応用する方法も着想できたため,適宜実施していきたいと思っている.

今後の研究の推進方策

研究実績の概要と同様に,4つの各項目毎に進捗を説明する.
A)デジタルツインのための弾性波動伝搬シミュレーターの開発:今後の研究推進方策として,これまで開発してきたシミュレーターを3次元問題へと拡張することが考えられる.また,現在までの進捗状況で述べたように,AIを用いてこのようなシミュレーションを実装することも検討している.
B)弾性波動伝搬シミュレーターによるビッグデータ生成:既に概ね目標を達成できているため,引き続きビッグデータの増強を図る,周波数や欠陥の位置等を変化させた場合のシミュレーションを多数回実施し,適宜C)やD)の高度化を図る.
C)レーザー超音波可視化試験(LUVT)とAIの融合:C)については当初の目標を概ね達成できている.そのためB)で作成したビッグデータ画像を増強させた分を学習に取り入れて,作成したAIの高度化を図る.特に,CFRP等の異方性材料中では超音波伝搬は複雑な挙動を示すことが知られているため,それらに対するデータを増強する.また,底面や側面における反射波を実際の欠陥と区別するような方法も検討していく必要があると考えている.
D)AIを活かした逆解析手法の開発:今後は,3次元スカラー波動問題,および3次元弾性波動問題へと拡張する.なお,本研究自体の目標には掲げていないが,実際に超音波アレイ探傷機を購入し,それらを用いて得られた波形をテストデータに使うことは,有用であるので,次回以降の研究課題として検討する.一方,時間判定法を用いた逆解析手法については,異方性問題や3次元問題へ拡張することも有用であると考える.そのため,今後はそれらに対する定式化を示すことで,実装を行っていく予定である.なお,AIに関する研究データは数多くの学習データが必要となる.それらをどのように効率的に作成するか,今後も検討する必要がある.

次年度使用額が生じた理由

前年度も本年度に引き続き,国際会議で発表することができなかった.また一部の国内学会もオンラインで開催されるなど,旅費を予定通り使用することが出来なかったため,それらを次年度に繰り越している.また,一部超音波探傷試験に使用する機械も,半導体不足の影響で,納品できなかったため,その分を繰り越している.

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] き裂による散乱波の反響環境下での時間反転集束2023

    • 著者名/発表者名
      木本和志・斎藤隆泰
    • 雑誌名

      土木学会論文集 A2(応用力学)

      巻: 79 ページ: -

    • DOI

      10.2208/jscejj.22-15007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 弾性波動場の深層学習と非破壊評価への応用-Grad-CAMを用いたAIによる弾性波の追跡-2023

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 雑誌名

      検査技術

      巻: 28 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] レーザー超音波可視化試験における欠陥検出のための深層CNN構造の検討2022

    • 著者名/発表者名
      中島未耶・斎藤隆泰・加藤毅
    • 雑誌名

      AI・データサイエンス論文集

      巻: 3 ページ: 916-924

    • DOI

      10.11532/jsceiii.3.J2_916

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 固体中の欠陥位置および大きさ推定のための深層学習ベース2次元逆散乱解析2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰・笹岡真次・廣瀬壮一
    • 雑誌名

      AI・データサイエンス論文集

      巻: 3 ページ: 935-944

    • DOI

      10.11532/jsceiii.3.J2_935

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] コンクリート補強面の欠陥に対する人工知能非破壊検査2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 雑誌名

      検査技術

      巻: 27 ページ: 63-69

  • [学会発表] データサイエンスの応用力学への応用 -順解析から逆解析まで-2023

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 学会等名
      令和4年度西部地区応用力学フォーラム「スパコンとデータサイエンスを援用したあたらしい物理エンジン」
    • 招待講演
  • [学会発表] レーザー超音波可視化検査におけるスタイル変換を用いたデータ拡張手法の検討2023

    • 著者名/発表者名
      中島未椰・塚越勇真・斎藤隆泰・加藤毅
    • 学会等名
      情報処理学会第85回全国大会
  • [学会発表] LUVT非破壊探傷のためのデータ拡張2023

    • 著者名/発表者名
      中島未椰・斎藤隆泰・加藤毅
    • 学会等名
      第15回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム
  • [学会発表] 3次元波動問題における深層学習ベース逆散乱解析2023

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰・笹岡真次・川上真穂・廣瀬壮一
    • 学会等名
      第30回超音波による非破壊評価シンポジウム
  • [学会発表] 非破壊評価とシミュレーション・データサイエンス2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 学会等名
      2022年接着・接合技術コンソーシアム第3回非破壊検査WG
    • 招待講演
  • [学会発表] 波動解析が拓くNDE4.0の実現-社会インフラ構造物への応用を見据えて-2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 学会等名
      数値解析が拓く次世代情報社会~エッジから富岳まで~
    • 招待講演
  • [学会発表] ポロジー導関数を用いた超音波イメージングの実験的検証2022

    • 著者名/発表者名
      中畑和之・中村悠人・丸山泰蔵・斎藤隆泰
    • 学会等名
      日本機械学会2022年度年次大会
  • [学会発表] 2次元波動問題を対象とした深層学習ベース逆散乱解析手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      笹岡真次・斎藤隆泰・廣瀬壮一
    • 学会等名
      令和4年度土木学会全国大会
  • [学会発表] LUVTと深層学習を用いた等方性材料中の表面欠陥の自動検出2022

    • 著者名/発表者名
      豊田哲志・斎藤隆泰・加藤毅・廣瀬壮一
    • 学会等名
      令和4年度土木学会全国大会
  • [学会発表] 深層CNNによるレーザ超音波可視化試験における欠陥検出と位置推定2022

    • 著者名/発表者名
      中島未椰・小西裕貴・斎藤隆泰・加藤毅
    • 学会等名
      第21回情報科学技術フォーラム
  • [学会発表] レーザー超音波を用いた一方向CFRPの弾性定数の推定2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰・豊田哲志・中畑和之
    • 学会等名
      日本機械学会M&M2022材料力学カンファレンス
  • [学会発表] レーザー超音波可視化試験と機械学習を用いた新しい弾性定数推定法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      豊田哲志・斎藤隆泰・中畑和之
    • 学会等名
      2022年度非破壊検査秋季講演大会
  • [学会発表] 2次元異方性純面外波動問題における深層学習ベース逆散乱解析2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰・笹岡真次・廣瀬壮一
    • 学会等名
      2022年度非破壊検査秋季講演大会
  • [学会発表] 深層学習を用いた異方性弾性体中の欠陥形状再構成2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤隆泰
    • 学会等名
      最適化シンポジウム2022
  • [学会発表] 機械学習を用いた一方向CFRPに対する新しい弾性定数推定法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      豊田哲志・斎藤隆泰・中畑和之
    • 学会等名
      第66回理論応用力学講演会
  • [学会発表] 深層畳み込みニューラルネットワークを用いたレーザ超音波可視化試験における欠陥検出と位置推定2022

    • 著者名/発表者名
      小西裕貴・田島賢哉・加藤毅・斎藤隆泰
    • 学会等名
      第14回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム
  • [学会発表] トポロジー感度を用いた薄板中の表面き裂に対する2次元動弾性時間反転解析2022

    • 著者名/発表者名
      豊田哲志・斎藤隆泰・木本和志
    • 学会等名
      第27回計算工学講演会
  • [学会発表] Deep-learning based inverse scattering for a defect in 2-D isotropic solids2022

    • 著者名/発表者名
      S. Sasaoka, T. Saitoh and S. Hirose
    • 学会等名
      15th World Congress on Computational Mechanics (WCCM-XV) and 8th Asian Pacific Congress on Computational Mechanics (APCOM-VIII)
    • 国際学会
  • [学会発表] Convolution quadrature time-domain boundary element method for 2-D pure inplane anisotropic viscoelastodynamics2022

    • 著者名/発表者名
      T. Saitoh, A. Furukawa and S. Hirose
    • 学会等名
      15th World Congress on Computational Mechanics (WCCM-XV) and 8th Asian Pacific Congress on Computational Mechanics (APCOM-VIII)
    • 国際学会
  • [備考] 研究代表者のHP

    • URL

      https://civil.ees.st.gunma-u.ac.jp/~applmech/index.html

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi