研究課題/領域番号 |
21K04232
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (40546339)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プレストレスとコンクリート / 非破壊評価 / 超音波探傷 / 可視化 / シース管 / 滞水状態 |
研究実績の概要 |
ポストテンション方式プレストレストコンクリート(以下、PC)構造のシース管は、PC鋼材を配する目的で設けられる。PC鋼材はPC構造の耐荷力の根幹を成す構造部材である。PC鋼材の緊張後、シース管にはPCグラウトの充填がなされるが、既存構造物には充填不良のケースがあり、未充填箇所のPC鋼材の腐食損傷や破断が報告されている。超音波を含む弾性波による非破壊評価は未充填箇所の発見に有効である。ただし、未充填箇所が滞水状態である場合はシース管からの反射波が弱くなり、見落とす可能性がある。そこでシース管の反射波を抽出するための寄生的離散ウェーブレット変換による信号処理フィルタを非滞水・滞水、それぞれの状態に対し作成し、課題解決を図った。中心周波数50kHzの広帯域型超音波探触子より超音波をシース管へ向けて超音波を入射し、反射波形を保存した。シース管がグラウト充填状態、未充填状態、未充填かつ滞水状態それぞれについて探傷し、信号処理のフィルタリングを施した。その結果、滞水状態で「信号/ノイズ」比の小さい条件下においても十分にシース管の画像化が可能となった。信号処理フィルタはシース管の充填状態の境界面情報を抽出することに特化したフィルタ、また同未充填状態、そして未充填かつ滞水状態の3種類のフィルタを構築することで、各状態に対する超音波の強調化、差別化に成功した。この信号処理をフェーズドアレイのフォーカシングで得た探傷波形にも適用し、その有用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シース管の空隙部が滞水状態であってもシース管の境界面の信号を有効に抽出するための信号処理を確立出来ている。この信号処理は、超音波の2探触子による探傷とフェーズドアレイによる探傷の両手法に対しても有効であることが確認できており、汎用性を有している。今後の自動判断手法構築に向けた、波形の前処理が完了した段階であり、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
シース管内部状態の自動判断をするうえで、データサイエンスを援用する。超音波探傷の計測データは1次元データであるため、1次元データの分類手法として多様な成果が報告されている機会学習の適用を行う。また機械学習の判断を補完するために、超音波探傷の結果を可視化し、人の目による判定に供する探傷画像も出力する。画像化に際しては線形化逆散乱解析を適用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、学会参加に係る旅費がオンライン開催等により不要となった。2022年度には国際学会と国内学会の両方に参加する予定であり、主としてこれに充当する予定である。
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