研究課題/領域番号 |
21K04233
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
判治 剛 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80452209)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホットスポット応力 / 溶接継手 / 疲労強度評価 / 維持管理 |
研究実績の概要 |
鋼橋に生じる疲労き裂は,橋梁がシステムとして立体的に挙動することによる二次応力に起因するものがほとんどあり,その立体挙動の影響を直接とりこむことができる疲労強度評価法としてホットスポット応力法がある.ホットスポット応力(HSS)は,30年近く前に提唱された概念ではあるが,依然として完成された手法とはいいがたく,その精緻化が本研究の目的である.具体的には,板厚や面外曲げの影響,板側面のき裂への適用性,疲労限の考え方などについて,合理的かつ実用的なHSS算出法を提示するものである. 今年度も昨年度に引き続き,板側面から生じたき裂(Type"b"き裂)を対象とし,ホットスポット応力による疲労強度評価法に関する検討を行った.得られた知見は以下のとおりである. 1) 面内ガセット溶接継手に対して過去の広範な実験により得られた疲労寿命データを,IIW3点法(4-8-12mm)によるホットスポット応力範囲で再整理した.その結果,IIWで示されている疲労強度曲線(ガセット長100mm以下の場合はFAT100,100mmを超える場合はFAT90)を満足することが示された. 2) 付加板を突合せ溶接した荷重伝達型T継手に対して,付加板厚を6, 12, 25mmと変化させて疲労試験を行った.疲労試験より得られた各継手の疲労寿命を公称応力で整理したところ,今回の試験体寸法の範囲内ではFAT71で評価できることを示した. 3) 有限要素解析により2)の試験体におけるホットスポット応力範囲(IIW3点法)とノッチ応力範囲を求め,それらにより疲労試験結果を再整理した.付加板の板厚中央で求めたホットスポット応力範囲ではFAT100を満足することを示した.また,き裂が発生した板角部のノッチ応力範囲で整理すると,FAT225を用いて安全側に評価できることも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にはない実験を実施せざるを得なくなったが,それは比較的順調に進んだことと,解析的検討が予想以上に進んだことから,昨年度の遅れは挽回できたものと考えている.ただし,成果の公表が遅れており,この点は早急に進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の流れで進める予定である. 1) 膜応力と面外曲げ応力の組合せ応力下の疲労き裂に対するHSSの検討を行う.鋼橋で一般的なリブ十字継手もしくは面外ガセット継手を対象とし,軸方向荷重を板厚方向に偏心して与え,軸方向力に面外曲げを付与した条件下で疲労試験を行う.偏心量を調節し,膜応力と面外曲げ応力の比率を変えて実験を行い,各応力の割合と疲労寿命を関連付けて整理する. 2) 1)の疲労き裂を対象とし,継手形状や寸法,膜応力と面外曲げ応力の比率などをパラメトリックに変化させた有限要素解析を実施する.解析モデルの溶接止端には曲率半径(例えば1mm)を設けておき,溶接止端位置のノッチ応力もあわせて求めておく.様々な考え方の下でホットスポット応力を求め,それとノッチ応力の関係を明らかにする.また,1)の実験的検討では試験体の寸法や数,与えうる膜応力と面外曲げ応力の比率には制約があるため,それをき裂進展解析によって補完する. 3) 比較的大型の疲労試験体による検証実験を行う.設備の制約上,実橋と同条件での疲労試験は不可能ではあるが,可能な限り大型の試験体を用いた疲労試験を行う. 4) 疲労試験結果と,解析により得られたHSSと局所応力の関係から,疲労寿命と相関の高いホットスポット応力算出法を明らかにする.
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