鋼橋に生じる疲労き裂は,橋梁がシステムとして立体的に挙動することによる二次応力に起因するものがほとんどあり,その立体挙動の影響を直接とりこむことができる疲労強度評価法としてホットスポット応力法がある.ホットスポット応力(HSS)は,30年近く前に提唱された概念ではあるが,依然として完成された手法とはいいがたく,その精緻化が本研究の目的である.具体的には,板厚や面外曲げの影響,板側面のき裂への適用性,疲労限の考え方などについて,合理的かつ実用的なHSS算出法を提示するものである. 今年度は,軸力と面外曲げの組合せ作用下におけるホットスポット応力算出法に関する検討を行った.具体的には,面外ガセット溶接継手を対象とし,膜応力に対する曲げ応力の比である曲げ混入率をパラメータとして疲労き裂進展解析を実施した.得られた主な成果は以下のとおりである. 1) 公称応力範囲を用いた場合,曲げ応力成分を4/5 倍して疲労強度評価を行う方法の妥当性を確認した. 2) 軸力と面外曲げの組合せ作用下では,参照点での板表裏面の応力から膜応力成分と曲げ応力成分を求め,それぞれでホットスポット応力を算出し,ホットスポット応力の膜応力成分,曲げ応力成分とした.このうちの曲げ応力成分の補正を行うことで,曲げ混入によるホットスポット応力範囲のばらつきを抑えることができる可能性を示した. 3) 板表裏面での応力集中の度合いが異なる場合でも,ホットスポット応力の膜応力成分と膜応力成分を分離して考えることができる可能性を示した. 今後は,継手形状や寸法が異なる場合でも上記の方法によりホットスポット応力を用いて疲労寿命を整理することができるかを確認する必要がある.
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