研究課題/領域番号 |
21K04238
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中村 一史 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (70264596)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 補修・補強 / FRP部材 / 鋼構造物 / 接着接合 / 耐久性 |
研究実績の概要 |
2021年度では,(1)鋼部材との接着接合部の強度,耐久性に関する検討に着手した.接着接合の強度は,せん断応力,垂直応力の複合応力を考慮するために,ねじりと引張を同時に載荷できる簡便な装置(現有設備)と円筒形断面の突き合わせ接着継手試験体を用いた.接合部の破壊に至るまでの挙動は,ひずみゲージ,高精度変位計によりひずみを精緻に計測し,接着剤の限界ひずみ・構成則の評価も試みた.その結果,対象とした鋼板接着用のエポキシ樹脂接着剤における,せん断応力と垂直応力の割合に応じた破壊包絡線を提示することができた.また,垂直応力の割合が高いほど,ばらつきが大きくなる傾向にあったが,それらの改善のために,接着層厚を均一にするための固定治具を作製し,強度の安定化を図ることができた. クリープ試験では,載荷装置・重錘(現有設備)を用いて,持続荷重(30kN)の載荷を行った.試験体は,上述の複合応力の検討との比較を行うため,同寸法の突き合わせ接着継手形式とした.検討の結果,同一の持続荷重でもクリープ破壊に至るまでの時間に大きなばらつきが生じることがわかった.これは,試験体に曲げによる影響が大きかったためと判断された.なお,コンプライアンスで評価することで,曲げによるひずみ増加の影響が考慮され,既往の研究におけるマスターカーブに近似する結果を得ることができた. 疲労試験では,振動型疲労試験機(現有設備)を用いて,当て板接着した板曲げによるはく離寿命を検討した.その結果,静的はく離に対する強度比とはく離破壊の繰返し回数の関係を提示することができた.既往の引張疲労試験との比較から,作用よらず統一的な評価が可能であることが確かめられた. さらに,関連する研究として,面内・面外ガセット溶接継手から発生した疲労き裂のCFRP接着による補修効果に関する検討を行い,所定のき裂長さに対する延命効果を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に照らして,すべての研究項目に着手するとともに,所定の研究成果を得ることができた.特に,複合応力を考慮した接着接合部の強度,突き合わせ接着継手のクリープに関する研究は,ばらつきが大きく,評価が難しかったが,接着層の厚さのばらつき,コンプライアンスに着目し,適切に評価することができるようになった. さらに,次年度以降で検討する予定の接着接合部のはく離破壊を数値解析でモデル化するための検討にも着手した.モデル化の妥当性を検証するために,ダブルストラップ接着継手を対象とした引張試験を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
データの蓄積の観点から,接着接合部の強度試験,耐久性に関するクリープ試験,疲労試験は,2022年度以降も継続する.接着接合の性能評価のための標準的な指標が示されていないことから,接着剤の種類,作用等に依存しない評価式の提示を検討したいと考えている. 2021年度では,接着接合部の強度,耐久性に関する基礎データが得られたことから,2022年度からはFRP部材の高度利用に関して,鋼部材の補修・補強に必要なFRP部材の積層構成・断面剛性の具体的な検討に着手する予定である.
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