研究課題/領域番号 |
21K04242
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 忠信 神戸学院大学, 現代社会学部, 研究員 (00027294)
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研究分担者 |
木本 和志 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (30323827)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フーリエ変換実数部のモデル化 / 実数部の確率特性と不確実性 / 自己回帰過程 / 因果性 / ヒルベルト変換 / 虚数部の再現 / フーリエ逆変換 / 加速度時刻歴の模擬 |
研究実績の概要 |
土木工学における非正規確率現象を発見し、それを抽出・解析するための方法論を開発し、近代確率過程論の枠組みを超越する新しい確率過程を構築するのが、本研究の主目的である。本年度は、観測加速度時刻歴のフーリエ位相スペクトルの確率特性が非ガウス性を示すことを明らかにした上で、その模擬法を開発し、それが長期記憶過程であることを明かにする。 最初に、フーリエ位相スペクトルの確率特性が非ガウス性を示すことを明確にし、位相スペクトルの模擬法を確立した。応答スペクトル準拠の加速度時刻歴の形状はフーリエ位相スペクトルに大きく依存するので、観測地震動から位相平均勾配の確率特性を抽出し、それを用いて模擬されるフーリエ位相スペクトルを用い、応答スペクトル準拠の加速度時刻歴を模擬する方法論を確立した。また、初期フーリエ振幅スペクトルの与え方にも任意性が有るので、その設定法についても考察を加えた。多数の設計用応答スペクトル準拠の加速度時刻歴を模擬し、それらを用いて、フーリエ位相スペクトルの不確定性が構造物の非線形応答特性に及ぼす影響を評価した。 次に、因果性を有する地震動加速度時刻歴のフーリエ変換の虚数部は、ヒルベルト変換を用いて実数部から再構築できることに着目し、加速度時刻歴を模擬できる方法論を開発した。まず、フーリエ変換・実数部の角振動数に関する変動特性を抽出し、それを実数部の「平均変動過程」とする。平均変動過程で実数部を除したものを「標準化実数部過程」と名付け、これが定常な確率過程となることを確認した。さらに,標準化実数部のサンプル過程を自己回帰過程として模擬した。その不確定性は自己回帰過程の予測誤差として評価した。模擬されたサンプル標準化実数部過程に変動過程を乗じて、サンプル実数部過程を求めた。さらに、ヒルベルト変換で虚数部過程を計算し、フーリエ逆変換で因果性を有する加速度時刻歴を多数模擬した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は三課題に分けられていた。第一では、非正規確率現象の候補として、地震動位相過程を取り上げ、それが円振動数を媒介変数とする連続過程であるが、円振動数の一階微分である位相平均勾配の確率特性が、分散の定義できないレヴィフライト分布で記述されることを明らかにする。位相過程を確率過程として模擬するため、レヴィフライト増分過程の模擬法を確立し、それを用いて、非整数レヴィ過程と命名する新しい確率過程を定義し、その模擬法を確立する。第二では、構造物の劣化過程を追跡できる確率過程の構成法を開発する。すなわち、レヴィフライト増分過程を駆動項とする確率微分方程式を展開する。第三では、構造物のライフサイクルコストの計算法に、得られた成果を導入し、土木構造物の新しいアセット評価法を開発することとしていた。本年度は第一課題を攻究することを目的とした。その目的はほぼ達成されたものと考える。得られた成果はハノーバーとケープタウンで開催される国際会議で発表することになっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、おおむね順調に進展しているので、第二・三の課題を次年度以降に考究することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内の研究打ち合わせ会が、コロナ禍のため開催できなかったため、国内旅費の使用が予定より少なかった。剰余の旅費は、本年度に開催される国際会議の登録料と会議への参加旅費として充当する。
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備考 |
東南大学(中国・南京)の准教授・万春風博士と地震動位相の非ガウス性に関する共同研究を実施しており、令和1年度までは、年数回に亘り、先方の経費で渡中し、研究打ち合わせ会を開催していた。令和2・3年度はコロナ禍で実質的な研究打ち合わせ会は開催できなかった。
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