研究課題
本研究の目的は、土木工学における非正規確率現象を発見し、それを抽出するための方法を開発し、近代確率過程論の枠組みを超越する新しい確率過程を構築することである。第一課題は、地震動位相に着目する。まず、アンラップ操作を行わずに、位相を角振動数の連続関数として表現できる方法を確立する。位相を線形遅れ部とそこからの変動部に分解し、変動部位相の角振動数に関する平均勾配の確率特性が非ガウス性を示すことを明確にする。さらに、それがフラクタル特性を有することを明らかにする。また、非ガウス性を有する確率過程の模擬法を確立する。それを用いて模擬されるフーリエ位相スペクトルを用い、設計用応答スペクトル準拠の加速度時刻歴を多数模擬する方法論を確立する。設計用応答スペクトル準拠の加速度時刻歴を多数模擬し、それを用いて、フーリエ位相スペクトルの不確定性が構造物の非線形応答特性に及ぼす影響を評価する。第二課題は。観測加速度時刻歴のフーリエ変換の実数部が振動数に関する定常過程であることを利用して、一観測記録から多数の加速度時刻歴を模擬する方法論を確立することである。そのために,実数部の角振動数に関する変動特性を抽出し、それを実数部の「変動過程」とする。この変動過程で実数部を除したものを「標準化実数部過程」と名付け、これが定常な確率過程となることを確認する。観測記録から得られる標準化実数部の確率特性が分散値の異なる2つの正規分布の和として表現されることを明らかにする。その上で、実数部の模擬法を確立する。さらに、加速度時刻歴が因果性を有するものとし て、フーリエ変換の虚数部が実数部のヒルベルト変換により再構築できる方法論を確立し、この結果を用いて加速度時刻歴を多数模擬する方法論を確立する。第三課題は、非ガウス系地震時信頼性解析の方法論を開発し、その方法論を第27回応用力学シンポジュウムにおいて発表する。
東南大学(中国・南京)の准教授・万春風博士と地震動位相の非ガウス性に関する共同研究を実施しており、令和1年度までは、年数回に亘り、先方の経費で渡中し、研究打ち合わせ会を開催していた。令和2~4年度はコロナ禍で実質的な研究打ち合わせ会は開催できなかったが、R5年度は土木工学における非ガウス現象の発見に関して共同研究を実施した。
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土木学会論文集A1(構造・地震工学)Vol.80,No.4(地震工学論文集第43巻)
巻: Vol.80,No.4 ページ: I_450 I_461