R5年度では、以下の研究を行い、想定した結果が得られた。 (1)過年度の実験結果を取りまとめ、「鋼板サンドイッチ工法で補強した健全及び損傷RC柱の耐震性能、コンクリート工学年次論文集、Vol.45、No.2、2023」の査読論文を発表した。その結果、補強試験体の耐力は補強していない基準試験体より1.8~2.2倍大きくなっており,補強した損傷RC柱と健全RC柱の耐震性能がほぼ同等であることが分かった。また、鋼板サンドイッチ工法で補強した損傷試験体の面内方向(袖壁ある方向)だけではなく、面外方向(面内方向と直行する方向)においても耐力が向上できることも分かった。 (2)補足実験として1体の1/2モデルの健全試験体を製作し、損傷を与えた後に耐震補強を実施した。R=1.0%の正側加力時に柱脚に曲げひび割れが入った。また、R=3.0%の正側加力時に最大水平力363kN を記録した。その結果、補強された損傷試験体の曲げ耐力(正負平均:353kN)は補強前の健全試験体(正負平均:81kN)と比較し、約4.36倍の耐力増加が確認された。また、補強された損傷試験体の破壊モードは曲げ破壊先行であった。 本研究の研究期間全体を通して、この工法は、施工の簡便さ(ローテック)と高い経済性(ローコスト)を有し、ピロティ建物に適用する場合には使用性への影響が少なく(スモールテェンジ)、大地震で損傷したRC柱を補強した場合、その優れた耐震性能を示した。従って、大地震で損傷したRC柱の応急補強と恒久補強を、PC鋼棒で緊結した鋼板サンドイッチ工法によって施すことにより、余震による建物の損傷拡大防止、損傷されたRC柱の耐力回復及び向上を同時に実現できる恒久補強工法の構築がほぼできた。
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