研究課題/領域番号 |
21K04251
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
梅崎 健夫 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50193933)
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研究分担者 |
河村 隆 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50324231)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 汚染地盤 / 杭基礎 / 吸水性高分子 / 摩擦低減 / 遮水 / 熱劣化 / 長期耐久性 |
研究実績の概要 |
(a)プレ劣化試験:プレ劣化試料の作製手法として,高温乾燥炉を用いた「熱劣化法」の適用性を検討した.吸水性高分子摩擦低減剤(FRC)の粉末を200℃の温度環境下に所定時間静置した.その粉末の性状変化を観察するとともに,ティーバッグによる膨潤倍率試験と簡易流動性試験およびゼリー強度試験を実施し,耐久性の高いFRCが熱劣化することを実証した.主な結論は以下のとおりである.①FRC粉末は白色から褐色に変化する.②FRC粉末の熱劣化において,膨潤特性よりも流動性や強度の方が顕著な変化を示す.③200 ℃の温度で熱劣化したFRC粉末は,加熱時間に伴い膨潤倍率は一旦少し増加し,その後,緩やかに減少する.しかし,72時間加熱しても130(g/g)以上の膨潤性能を有し,膨潤特性に対する耐久性は極めて高い.④Ra=60(g/g)の膨潤ゲルは,200 ℃で15時間以上の加熱により流動性を示し,約20時間後では粘性の無い液体状となる.⑤Ra=60(g/g)の膨潤ゲルに対するゼリー強度も一旦少し増加するが,約20時間以降には顕著な減少傾向を示し,約60時間後には約80%(純水のゼリー強度とほぼ等しい値)まで低下する. (b)高温促進試験:FRCの高温促進試験を実施する前に,比較的耐久性が劣る汎用吸水性高分子(CA)の吸水膨潤ゲル(Ra=60(g/g))に対して試験を行った.高温促進法(T=50,60,70℃)による劣化時間の予測手法(アレニウスプロット)の有効性を検証するために,簡易流動性試験とゼリー強度試験を実施した.主な結論は以下のとおりである.①温度毎の流動性の経時変化が定量的に評価できることを示した.②複数の供試体を用いたゼリー強度試験から温度毎の強度変化を定量的に評価できることを示した.③プレ劣化試料を用いた高温促進法による流動性とゼリー強度の劣化時間の予測手法の実行可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)プレ劣化試験:当初計画通り,高温乾燥炉を用いた「熱劣化法」について検討を行った.吸水性高分子摩擦低減剤(FRC)の粉末を200℃の温度環境下に所定時間静置し,ダンシングミルにより粉砕することにより,プレ劣化試料を作製することに成功した. (b)高温促進試験:FRCの高温促進試験を実施する前に,比較的耐久性が劣る汎用吸水性高分子(CA)の吸水膨潤ゲル(Ra=60(g/g))に対して試験を行った.高温促進法(T=50,60,70℃)による劣化時間の予測手法(アレニウスプロット)の有効性を検証するために,簡易流動性試験とゼリー強度試験を実施した.その結果,プレ劣化試料を用いた高温促進法による流動性とゼリー強度の劣化時間の予測手法の実行可能性が示された.これらの結果を踏まえて,実験条件を精査し,次年度以降に,耐久性の高いFRCのプレ劣化試料に対する温度条件の異なる高温促進法による膨潤倍率試験と膨潤倍率の異なる流動性試験およびゼリー強度試験を実施することとした.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画においては,FRC粉末の劣化程度(高温温度T,高温時間t)を変化させたプレ劣化試料を用いた膨潤倍率(Ra=5,10,15g/g)の吸水膨潤ゲルの耐久性を検討するために,高温促進法(T=50, 60, 70℃)を用いた簡易流動性試験およびゼリー強度試験を実施する計画であった.しかし,FRC粉末のプレ劣化時間が長く,実験条件や実験ケースが膨大となるので,当初の計画を効率良く実施するために,まず,FRC粉末の熱劣化(高温温度T,高温時間t)による耐久性を明らかにし,その結果を踏まえて条件設定を精査した後に,吸水膨潤ゲルの耐久性を検討することとした. (a)プレ劣化試験:令和3年度に成功したT=200℃の「熱劣化法」に加えて,T=180,150℃の高温時間tにおけるプレ劣化試料を作製し,それぞれの劣化状態を評価するとともに,以下の(1)~(5)の試験を実施する.(1)膨潤倍率試験:高温温度T,高温時間tを変化させたFRC粉末の膨潤倍率の熱劣化による変化を検討する.(2)簡易流動性試験:同様の試料に対して,熱劣化による流動性の変化を検討する.(3)ゼリー強度試験:同様の試料に対して,熱劣化による強度の変化を検討する.(4)膨潤・透水試験:同様の試料に対して,熱劣化による膨潤倍率や透水係数の変化を検討する.(5)プレ劣化試料の物理化学特性を走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて検討する.以上の結果から,効率良く実験条件を設定し,吸水膨潤ゲル(地盤内の膨潤倍率に相当する,Ra=5,10,15g/g)の高温促進法(T=50, 60, 70℃)を用いた流動性試験およびゼリー強度試験を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 当初の計画通り,プレ劣化試料作製のために高温乾燥炉およびダンシングミルを購入した.FRCを溶解するための適切な有機溶剤を選定することが困難であるために,ゲル浸透クロマトグラフィー分析が実施できなかった.そのため,次年度使用額が生じた.次年度以降にその他の物理化学的アプローチを検討することとした. (使用計画) 次年度使用額は,実験装置の改良と計測機器の追加および物理化学分析費として使用する.令和4年度請求額は,当初の予定通り,消耗品費,論文投稿料,旅費,人件費・謝金および分析などその他の経費として使用する計画である.
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