本研究では,(1)懸濁液中の細粒分の粒度の調整方法,(2)透水係数の低減率,(3)注入範囲と流亡状況から止水技術の効果を評価する室内試験を実施することを目的とした. (1)現場試料から粒径5~7μmの土粒子を抽出する方法として,ストークスの法則を用いた沈降時間の推定による2段階の抽出方法を示した。実際に細粒分のみの懸濁液を作製した結果,平均粒径が5~7μmで質量配合比が0.25程度の懸濁液を抽出できることが示唆された. (2)透水係数の低減率の検討では,懸濁液注入後の通水試験から,既往の研究での知見である透水係数の低減効果の高い粘性係数である1~1.5dPa・s程度が該当することが判明するとともに,グラウタビリティー比と実験結果の注入可否の判断が整合する結果が得られた. (3)二次元通水下での注入実験では,回転軸により水平および鉛直での実験を可能とした土槽の中央からクレー懸濁液を圧入して注入範囲を把握するとともに,注入後に段階的に動水勾配を上昇させることで,透水性低減効果を流量と動水勾配の変化から,注入範囲の変化を間隙水圧の計測値から整理した.また,未通水条件と通水条件での圧入時の違いの有無について調べた結果,通水中の条件においても非通水時と同様に注入が可能であることが示唆された.さらに,粒径の小さなクレー懸濁液は浸透注入の傾向を示す楕円形であり,粒径の大きなクレー懸濁液は浸透割裂注入の傾向を示す横長であることが判明した.実験による注入範囲に対して粒子グラウトの浸透距離を推定する理論式の適用性の検証を行うとともに,流線網から注入範囲の変化を評価した結果,粒径の小さなクレー懸濁液にはクレー懸濁液の注入範囲の理論式が適用可能であることが示唆された.
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