本研究は,地震で被災した熊本城石垣と,豪雨で崩壊した丸亀城石垣を調査対象に,石垣表面の情報が得られる石垣断面形状簡易測量,石垣の伝播速度測定,石垣隙間面積の画像解析とともに,本研究で新たに石垣内部の情報が得られるカメラによる空洞調査と地中レーダ探査を実施することで,石垣石のかみ合わせや石垣背面栗石層の密実さを定量的に把握し,石垣表面と内部の情報を融合して城郭石垣の力学的安定性を評価しようとするものである。
・熊本城および丸亀城の石垣の変状調査として,携帯型レーザー距離計を用いて石垣断面形状を測量した。本研究では,それらの測量データとともに,新たに計測した石垣断面形状を用いて石垣面の孕みの程度を把握し,測量データから見た変形域の抽出を行なった。 ・熊本城長塀での連続した250m区間での伝播速度を計測した結果,伝播速度の平均値は,高さ1mで262.7 m/s,高さ2mで267.8 m/sと概ね等しいが,同一計測地点における高さによる伝播速度の違いは,石垣の変形程度によるものと考えられた。 ・丸亀城の二の丸および三の丸における石垣の面ごとに,地盤面から高さ1mおよび2mの位置において水平距離5m間の伝播速度試験を実施した。試験の結果,二の丸において,高さ1mよりも2mの伝播速度が全体的に高いが,これは石垣の変形形状による違いであると考えられた。
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