研究課題/領域番号 |
21K04260
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 大知 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (40875225)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射性廃棄物処分 / ベントナイト / 膨潤 / 水分移動特性 / 安全性評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は各種放射性廃棄物処分の安全評価に不可欠である,ベントナイト系材料の各種地下水質における水分移動特性データベースと理論評価手法の構築である.試験の短期化とケース数拡充のため,「メスシリンダーを用いたベントナイト系材料の浸潤・膨潤特性の簡易実験法」を用いる.今年度はベントナイトの浸潤・膨潤特性を規定する交換性陽イオンやモンモリロナイト含有率の異なる4種類の粉状ベントナイトを用いた.水質は蒸留水,人工海水,地下水のイオンを含んだNaCl・CaCl2・NaHCO3溶液を用いた.その結果,蒸留水における膨潤特性は,交換性陽イオンとしてNa+イオン主体のベントナイト(Na型ベントナイト)が優れており,Ca2+イオン主体のもの(Ca型ベントナイト)はNa型ベントナイトの約1/4程度にとどまり,既往検討と同様であった.Mg2+イオンとCa2+イオン主体のもの(Ca-Mg型ベントナイト)はNa型とCa型ベントナイトの中間であり,Mg2+イオンによる膨潤特性への影響を把握できた.浸潤特性は,Na型が最も浸潤速度が遅く(約0.005 mm/min),Ca型・Ca-Mg型はNa型に比べて5倍程度速いことが分かった.人工海水環境下では,Na型ベントナイトの膨潤性が蒸留水の約1/5と低下して浸潤速度が約5倍速い一方,Ca型ベントナイトでは大きな差異はなかった.NaCl・CaCl2・NaHCO3の3種類の水溶液について,イオン強度を人工海水と統一したところ,Na型ベントナイトについてNaCl・CaCl2では膨潤率が約1/5に低下して浸潤速度が蒸留水の約5倍であった一方,NaHCO3では膨潤率が低下した一方で浸潤速度は蒸留水と同様であった.Ca型ベントナイトではいずれの供給水溶液で膨潤率・浸潤速度はほぼ一定であり,多様なイオン環境下においても一定の膨潤・水分移動特性を期待できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画時点で,本年度は水分移動特性データベースのリファレンスデータとなる,蒸留水および人工海水環境での実験データの蓄積を最優先課題として設定しており,本年度は多種類のベントナイトを用いてそのデータを取得できたため,順調に進展しているといえる.また,特に新規性の高い知見として,既往検討で扱われてこなかったCa・Mg型ベントナイトの膨潤・浸潤特性を評価できたことや,NaHCO3水溶液下での特異な挙動などを評価することができ,今後の方針を定めるうえで重要な知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,「メスシリンダーを用いたベントナイト系材料の浸潤・膨潤特性の簡易実験法」において,交換性陽イオンやモンモリロナイト含有率,粒径の異なるベントナイトを3種類程度新たに導入するとともに,水質として人工海水の濃度調整やpHの調整などをパラメータとした検討を行い,ベントナイト系材料の水分移動特性データベースを拡充する.また,処分場において想定される,水分移動に係る境界条件として想定される排気性や地下水圧を調整可能な模型実験装置を設計・製作し,上記境界条件の影響を評価を試みる.
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