研究課題/領域番号 |
21K04262
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伊藤 譲 摂南大学, 理工学部, 教授 (30281752)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌洗浄 / 凍結融解 / イオン交換反応 / 汚染土壌 / 重金属 / 鉛 / 酢酸 |
研究実績の概要 |
凍結融解とイオン交換反応を利用した重金属汚染土壌の洗浄実験を行った。試料土は京都伏見産の黄土を用いた。模擬汚染物質は試薬として用いられる1000ppm鉛標準液を希釈して、試料土に混合してペースト状から20kPaまで予圧密して供試体(φ10cm、h5cm)を作成した。洗浄液は酢酸を希釈して(0.8~1.7mol/L)用いた。凍結試験では、供試体下部から上部方向に温度勾配2.0℃/cm、冷却速度0.4℃/hで凍結して、その後融解している。凍結時は上部から洗浄液が供給可能な状態にして、融解時は上部を閉じて、下部からのみ排水が可能な状態にした。洗浄効果の評価は、供試体と排水中の鉛量を蛍光X線と底質調査方法による全量分析を行った。 6ケースの実験より、次の結果が得られた。(1)排水の分析結果より、凍結融解の繰り返し回数に比例して一定割合で鉛が除かれる傾向がみられる。(2)間隙水の置き換え率が増加すると、洗浄は加速される傾向が着られる。(3)実験後供試体の分析結果では、排水の結果ほどには洗浄が進行していない。(4)実験後供試体では、供試体上部が下部よりも鉛含有量が高い傾向がみられる。 この結果に対して、次のように考察されている。(1)排水と供試体中の鉛含有量の矛盾は、測定方法の違いと含有量の低さが原因と考えられるので、すべての排水と供試体資料の分析を精査する。(2)試料土への鉛含有量と酢酸量の増加を図る。(3)凍上による間隙水の吸引に加えて、吐き出し効果を期待する実験を行う。なお、実験結果については今後も分析を継続する予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験後の分析結果が測定方法により比較的大きな違いがみられる。これは、当初配合した模擬汚染土壌の鉛の濃度が低すぎたことが原因で蛍光X線分析で検出されにくいものと考えられたので、前年度の実験から得られた主要なサンプルの排水と試料土を他の全量分析で再度分析を実施した。 その結果、予想通りに低濃度サンプルでのばらつきが激しいことが判明した。そこで、試料土の鉛含有量を増加させると共に、分析においては、部分的に全量分析を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
模擬汚染土壌中の鉛量の調整については、従来の2倍の濃度に調整することで解決の見込みが立っている。また、実験の要所においては全量分析を実施することとした。 実験結果の分析より、物質移動において凍上現象だけでは解釈できない現象が見られた。これは、異物を吐き出す現象であると考えられるので、凍上現象と並行して吐き出し現象の影響を確認するための凍結実験を追加実施する予定である。 実験では、冷却の速度を現在の0.4℃/hから0.1℃/h以下に低下させ、実験中の排水と実験後の供試体中の鉛分布を分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部データに矛盾が見られたので、実験結果の精査に注力することになり、装置に関する物品費の執行を中断した。なお、現時点で原因は把握できているので、実験条件を変えるなどして対応可能であり、実験器具の費用として「次年度使用額」を執行する予定である。
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備考 |
環境地盤研究室の教育研究活動と論文等について記載してある
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