本研究の目的は,冬期に結氷する寒冷地河川とその周辺の海域・海岸において,河氷に着目した詳細な現地観測を実施し,現地観測結果に基づき現象を定式化し,これらの式を統合してジュエリーアイスの出現時期推定手法を開発することである.研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下となる. 2021年度に定点カメラを含む現地観測を実施し,この結果に基づき,ジュエリーアイス出現現象を形成・破壊・輸送・堆積・融解の5つに区分した.形成については,課題であった十勝川河口周辺の氷板厚の実測値の取得について,2021年度の現地観測により値を得た.輸送については,課題であった輸送経路について,2021年度の現地観測によりGPSを搭載した氷模型によって輸送過程を観測することが出来た.融解については,融解期間を設定することで,ジュエリーアイスの融解を表現することが出来た. 2022年度では,出現現象を形成・破壊・輸送・堆積・融解の5つに区分して定式化を行い,ジュエリーアイス出現時期推定手法を開発した.定点カメラで撮影された画像を用いて画像解析を行いジュエリーアイスの堆積面積を算出した.画像解析によるジュエリーアイスの堆積面積と計算値による堆積量の比較を行い,計算結果の妥当性を確認した.本手法を用いて出現予測を行い,ホームページ上で公表した.さらに現地観測を実施し,その結果から本手法の課題を明らかにした. 2023年度では,形成については,潮位変動に伴う流速変動を考慮することで河口域の河氷厚の変動を精度高く再現することが出来た.破壊については,水理実験結果より,波の高い波峰部において河氷が割れて細分化されることが分かった.また,ジュエリーアイスのような透明な氷は,十勝川河口海岸だけではなく,オホーツク海の海岸でも出現することが現地観測の結果,明らかとなった.
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