研究課題/領域番号 |
21K04268
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
飯村 耕介 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 助教 (30642128)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水理模型実験 / 蛇行河川 / 氾濫 / 令和元年東日本台風 / 那珂川水系荒川 |
研究実績の概要 |
本研究は,令和元年東日本台風によって栃木県内で大きな被害を受けた急流の中小河川を対象として,氾濫流が河道へ戻るときの逆越流現象に着目し,1.氾濫流が河道へ戻るときの逆越流が河道内流況へ与える影響,2.対岸の堤防決壊へ及ぼす影響について明らかにすることを目的としている. 令和4年度は,令和元年東日本台風において連鎖的な決壊が発生したとみられる那珂川水系荒川を対象に,蛇行河川形状と氾濫する堤内地形状を再現し,計測範囲の上流側と下流側の堤防を,破堤を想定して取り除き,堤内地の氾濫流と,その氾濫流が河道へ戻る流れを再現して実験を行った.実験においては河道の蛇行度Sが1.5,1.35,1.2となるように3ケースを設定した.横断方向の蛇行幅は被災した荒川が段丘崖に挟まれた地形形状をしているため開水路幅と同じ50 cmとし,蛇行河道幅は15 cm とした.河床勾配は1/200とし,河道と堤内地の比高差は2 cmとして堤内地をかさ上げしている.また戻り流れが生じる堤内地側に現地植生を再現した円柱群による植生模型を配置した実験も実施した. 堤内地を流れる氾濫流は,蛇行度が大きくなるほど,破堤長が短くなるほど大きな流速で流下していた.さらに氾濫流の流速が大きいほど河道内への戻り流れの流速が大きく,対岸へ向かうベクトルを持つ流れが多く確認された.また,蛇行度が大きいほど対岸における水深の増加も大きくなっていることが確認できた.したがって,蛇行度が大きい河川であり流れが集中しやすいような破堤長の短いケースにおいては,対岸での水深や流速が大きくなるため,氾濫流の戻り流れが強い勢いを保ったまま対岸堤防を越水・決壊させる危険性が高いと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度はおもに令和元年東日本台風において狭い範囲で複数箇所の決壊・溢水が確認された藤田橋から新荒川橋までの区間の河道形状を再現した水理模型実験と,数値シミュレーションを実施する計画で,水理模型実験では河道形状である蛇行度と,上流側の決壊幅を変えた実験を実施し,氾濫流の戻り流れへの影響を確認するとともに,令和5年度に実施予定であった戻り流れ発生地点における水害防備林等の植生群に関わる実験も先行的に実施した. 一方,シミュレーションについては準備段階であり,令和5年度に継続的に実施する.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度においてはPIVを用いて氾濫の戻り流れの詳細な流況を水理模型実験で確認する.令和4年度においては上流側決壊幅の影響をおもに見たため,令和5年度においては下流側の逆越流地点における開口幅が戻り流れに与える影響について模型実験を実施する. 既に令和4年度に実験水路模型の作成が済んでいるので,新たに作成する必要がある詳細測定区間の模型作成を速やかに進め,実験を実施するとともに,実験と並行して数値シミュレーションを実施し,実スケール解析における精度検証や実験ケースにできなかった条件での解析を進め,考察を補完する.
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次年度使用額が生じた理由 |
わずかに残金が生じたので,次年度に実施する水理模型実験の模型材料費(消耗品費)として使用する予定です.
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