本研究は令和元年東日本台風によって栃木県内で大きな被害を受けた急流の中小蛇行河川を対象として,氾濫流が河道へ戻るときの逆越流現象に着目し,氾濫流が河道へ戻る流れが対岸の河道内流況へ与える影響について明らかにすることを目的としている. 令和3年度はUAVを活用した空中測量により,那珂川水系荒川の河道及び氾濫原の標高データを収集し,得られたデータをもとにした数値解析を実施し,氾濫後に実施された堤防のかさ上げ及び護岸工事により堤内地への越流水が一定程度低減しているのが確認できた一方で,改修前と同様の地点で氾濫流が集中して逆越流していることを確認した. 令和4年度は,蛇行河川形状と氾濫する堤内地形状を再現した水理模型実験により,蛇行度と上流側決壊幅を変化させたときの下流決壊口対岸流況への影響について検討した.堤内地を流れる氾濫流は,蛇行度が大きくなるほど,上流側破堤長が短くなるほど大きな流速で流下していた.さらに氾濫流の流速が大きいほど河道内への戻り流れの流速が大きく,対岸へ向かうベクトルを持つ流れが多く確認された.また,蛇行度が大きいほど対岸における水深の増加も大きくなっていることが確認できた. 令和5年度は,前年度と同様の蛇行・堤内地形状の水理模型実験と現地スケールの数値解析により下流側決壊幅を変化させたときの対岸流況への影響について検討した.下流側開口部の幅が狭いほど,下流側開口部から早い流速で蛇行河道へと戻る流れが生じ,大きく曲がりながら開口部側に流れが向かうものの,対岸にも流速の速い領域が広がるように流れること,蛇行河道が狭いほど氾濫原へと流れる流量が増し,その流れが下流側開口部へと集中するため,下流側開口部の対岸側に広く高流速域が形成される一方で,蛇行河道内は流量が低下するが,河道幅が狭い影響で水深が大きくなるため,平均的な流速は他ケースに比べて小さくなることを確認した.
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