研究実績の概要 |
地球システムモデルを用いた将来の気候変動予測の結果は、多様な分野で利用されているが、予測結果は系統的な誤差を持つことが知られている。そのため、モデルの高度化・精緻化が必要とされており、陸域過程の精度良い表現は重要な課題のひとつである。本研究では、地球システムモデルに結合可能な統合陸域シミュレータ(Integrated Land Simulator; ILS; Nitta et al., 2020)において、特に積雪過程に着目して改良を行い、陸域水循環シミュレーションの改善は、気候モデルの精度向上にどの程度寄与するのかを明らかにすることを目的としている。最終年度は、気候モデルMIROCとILSを結合する気候モデル結合実験を主に実施した。結合実験では水収支が十分な精度で閉じることが重要となるが、この点をはじめ技術的な課題の解決に時間を要した。同時に、海外の研究機関との共同研究を開始し、ILSとフランスの陸モデルの比較に着手した。さらに、ILSのユーザ拡大のため、モデルのドライバ部分をPythonで書き換え、高速化とモデル構造の単純化を図った。これまでに行った開発イベントについては、過去3年間の参加者を対象としてアンケート調査を実施し、その効果と今後の課題について検討を行った。研究期間全体を通じて、ILS ver.1を使用した陸域の長期オフライン実験、降雪遮断スキームのレビュー、積雪時のアルベド計算スキームの改良、ILSとMIROCとの結合実験を実施した。さらなる改善点を議論するため、国際的な陸モデルベンチマークプロジェクトに参加し、海外の研究機関との共同研究に着手した。
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