研究課題/領域番号 |
21K04274
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
梶川 勇樹 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (70432606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 津波 / 地形変化 / 土砂輸送 / 掃流砂層モデル / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,津波防災・減災対策に資するため,平面2次元と3次元解析によるハイブリッド津波移動床モデルおよび瓦礫輸送を統合した新たな解析モデルを開発するとともに,解析モデルよる土砂・瓦礫の集積予測から「インフラ網断絶リスクマップ」の提案を目指すものである. 令和3年度は当初,平面2次元解析に3次元解析を組込んだハイブリッド津波移動床モデルの開発を計画していた.しかしながら,津波移動床モデルの作成を進める上で,遡上津波による海域(移動床)から陸域(固定床)への土砂輸送・土砂堆積の再現性向上が課題となった.そこで,移動床と固定床とが混在する場での土砂輸送を高精度に予測できる手法として,従来河川分野で用いられてきた掃流砂層モデルを修正し,新たな掃流砂層モデルを開発した.具体的には,固定床上の土砂量に応じて非線形に流砂量を修正するとともに,平衡掃流砂層厚も変化させることでその土砂輸送現象を精度良く予測できることを見出した.そして,流砂量および平衡掃流砂層厚を修正するためのそれぞれの係数について,実験室レベルではあるが適正値も見出すことができた.以上の新たな掃流砂層モデルを平面2次元および3次元解析のそれぞれに導入し,ハイブリッドモデルの開発を進めた.また,3次元解析のみではあるが,津波襲来時の港湾内の地形変化について,岸側境界形状が直立壁から傾斜壁に変化した場合でも本モデルにより良好に現象を再現できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,当初想定していなかった遡上津波による海域から陸域への土砂輸送・土砂堆積の再現性向上について検討を進めたため,ハイブリッド津波移動床モデルについて十分な妥当性の検証が実施できていない.その一方で,本解析モデルによる遡上津波での土砂輸送・土砂堆積の再現性が向上したため,本研究で最終目標とする「インフラ網断絶リスクマップ」の提案に対しては精度の良い結果が期待できる.また,寄り道はあったもののハイブリッド津波移動床モデルの開発は進んでおり,その妥当性検証に向けての検証材料となる平面2次元解析および3次元解析のそれぞれ結果は既に出力済である.したがって,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,まず,ハイブリッド津波移動床モデルの妥当性検証を進める.平面2次元解析と3次元解析による結果は出力済みであるため,ハイブリッドモデルによる計算結果との比較から,ハイブリッドモデルの再現精度および計算の効率性について検討を進める.次に,本ハイブリッドモデルと瓦礫の発生・移動・集積モデルとを統合した新たな解析モデルの開発を進める.個別要素法の考えを援用し,瓦礫を粒子で表現する.粒子を結合することで,複雑な瓦礫形状の表現も可能である.開発したモデルを,津波による瓦礫情報が多く存在している地域に適用し,モデルの妥当性・適用性の検証を進める.さらに,地形変化の有無による解析から,地形変化が瓦礫移動に与える影響を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響で,当初予定していた研究成果報告および資料収集のための学会が全てオンライン形式となり,旅費がかからなかったために残額が生じた.ただし,残額は少額であるため,令和4年度は当初計画通り,状況の改善を見計らって多くの関係学会に参加するとともに,研究成果の公表に向けての論文投稿料に使用予定である.
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