研究課題/領域番号 |
21K04276
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田井 明 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20585921)
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研究分担者 |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80432863)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有明海諫早湾 / 潮流 / 溶存酸素濃度 / 河川流量 / 成層度 |
研究実績の概要 |
2年目は,有明海諫早湾を対象に潮流,底層溶存酸素濃度,河川流量,成層度の経年変化およびそれらの関連性を明らかにすることを目的に長期的な観測データの解析を行った.諫早湾では2002年より農林水産省九州農政局による観測櫓において毎時自動昇降式水質計により毎時の水質(水温,塩分,溶存酸素など)が観測されている.本研究ではこのデータを用いて夏季平均の成層度および底層溶存酸素濃度の経年変化特性を調べた.加えて,潮流流速の長期変化と水質との関係を調べるために2013年~2021年の夏季と冬季の1~2ヶ月間,諫早湾中部~諫早湾口沖の4点(九州農政局観測櫓B3, B4, B5, B6)の海底に超音波ドップラー流速計を設置して,流速・流向の鉛直分布を測定した. M2潮潮流振幅は18.6年周期の潮汐変動に対応して変動していた.次に,河川流量が大きくなる時に成層度が大きくなっており,多くの年で対応して変化しており,諫早湾の成層度に対する河川流量の影響は大きいことが分かった.また,成層度と底層溶存酸素濃度についても,どの地点においても高い相関が見られ,成層度が底層溶存酸素濃度に大きく影響していることが分かる.しかし,流速・Simpson&Hunter指標と成層度の関係については強い相関は見られず.成層度の変動要因として,潮潮流振幅よりも年毎の河川流量変動の影響が大きいことが示された.しかし,B3地点では弱い相関が見られることから潮流の変動も一定程度寄与していることが示唆された. また,数値シミュレーションに関しても研究協力者のBangor大学のS.Neill教授との共同研究でROMSによる有明海のシミュレーションにおける境界条件の取る扱いについて改善した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目までに,各県により実施されている浅海定線調査データ(約40年分),九州農政局による諫早湾の環境モニタリングデータ(約30年分),有明海観測タワー(佐賀大学)で実施されている自動観測櫓のデータおよび有明海4大学共同観測プロジェクト(研究代表者が参画)で得られたデータなどモデル湾である有明海の水環境データならびに気象データの収集整理を実施した.また,サポートベクターマシンを用いて,水質・気象データの一期間を学習用データ,そのほかの期間をバリデーションデータとして,実データの溶存酸素の予測モデルを作成した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は計画通り以下の内容を実行する. 1.確率密度曲線のバイアス補正方法の検討(担当:田井) 2年目までに開発した評価モデルにd4PDF過去実験(3000年分)の年毎の有明海流域平均最大降雨イベント時(筑後川の基準値である48時間雨量を対象)のデータを与えて,過去実験データの確率密度曲線(n=3000)を作成する.作成された確率密度曲線と実績のヒストグラムを比較し,本手法における系統誤差(バイアス)の有無とその程度を定量的に把握し,サブテーマDで作成する将来の確率密度曲線の補正方法を決定する. 2.温暖化後の環境災害リスクの評価(担当:田井,齋田) サブテーマBで構築した機械学習評価モデルにd4PDFの2℃上昇実験(3240年分)の4℃上昇実験(5400年分)年毎の有明海流域平均最大降雨イベント時の気象データを与えて,確率密度曲線を作成する.作成された確率密度曲線(n=3240,n=5400)をサブテーマCで検討したバイアス補正手法で補正する.膨大な量の計算ケースがあるため2℃上昇実験を齋田,4℃上昇実験を田井が担当する.
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