本研究の目的は,急勾配である水路式魚道においても,魚類が遡上できるような流況を作り出すことである.これまで,魚ののぼりやすい川づくりの手引きでは,水路式魚道の縦断勾配を1/20以下にすることが推奨されている.一方で,魚道延長が十分に確保できない箇所,特に中小河川では,その条件を満たすことが困難なときもある.実際に,縦断勾配が1/20よりも急な水路式魚道も存在しているため,より急勾配な条件での水路式魚道について検討することは重要である.そのため,本研究では水深を確保し流速を緩和することを考え,粗度要素として円柱を利活用する.そこで本研究では,主として水理実験(流速および水深の計測)と実魚を用いた挙動実験(流れに対する魚の遊泳行動の観察)を実施し,縦断勾配が急な水路式魚道でも魚類が遡上できるような手段を見出し,魚類等にとって効率的な魚道を計画することを目指した. 令和3年度・4年度の結果を受け,実際に現地水路に急勾配(およそ1/7)でありつつも,可搬可能であり,かつ,簡易的な水路式魚道を設置し,現地で採捕したヌマムツ等を使用して実験を行った結果,魚類は魚道を遡上し,落差上流に移動することが可能となった.また,より多くの魚類が魚道を認識できるような魚道下流側の工夫を室内実験にて行い,改めて現地水路に反映させ,魚道がより機能することを確認した. そのため,本研究で提案した魚道は,維持管理(修復等含む)が容易であり,急勾配であっても魚道として機能するということが分かった.
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