研究課題/領域番号 |
21K04284
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
長田 健吾 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (30439559)
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研究分担者 |
清水 義彦 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70178995)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水工水理学 / 河川工学 / 流木災害 / 河床洗堀 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
今年度は,私たちが構築を進めてきた3次元流木解析モデルに平衡および非平衡の各流砂モデルを組み込んだ新たな解析モデルの構築を行った.解析モデルの検証として,Schalko博士の実験データに適用し,流木堆積による局所洗堀を再現可能かどうか検証を行った. 平衡流砂モデルには,広く利用されているM.P.M.式を採用した.非平衡流砂モデルは,流砂の離脱,土砂移動,堆積の各過程をモデル化したものであり,本研究では,粒子追跡型の非平衡流砂モデルである長田ら(京都大学)のモデルを採用した.非平衡流砂モデルは,洗堀現象の再現に適しているとされるが,平衡流砂モデルに比べて計算負荷が非常に大きく,計算負荷の大きい流木解析も同時に扱うことから,計算負荷の観点もモデル構築を進める上での着目点となる. 解析モデル検証の対象実験は,0.4m幅の直線水路に7本の橋脚が設置され,河床材料として2.7mmの均一砂が用いられた.一定流量下で流木を投入し,その洗堀深と水位上昇量が調べられた.解析の結果,平衡流砂量式を用いた結果では,流木の堆積に伴い洗堀が生じはじめ,その後徐々に洗堀が進行した.一方,非平衡流砂モデルの結果は,流木が堆積しても洗堀の進行が遅く,洗堀深も小さくなり,流木の堆積形状も実験と異なる状況となった.最大洗堀深および水位上昇量は,平衡流砂モデルで約0.07mと約0.02m,非平衡流砂モデルで約0.06mと約0.03mとなり,それぞれ実験結果(0.13m, 約0.03m)に比べると過小評価となった. この結果の違いに対し流砂量式にも改善すべき点はあると考えられるが,流れの計算精度も影響していることが分かり,特に底面せん断力(摩擦速度)に関わる見積もり方法を十分に検討する必要があることが分かった.この改善を図りながら,流砂量式についても検討を重ね,解析モデルの精度向上を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究目的は構築する解析モデルの課題を収集することであったため,実験への適用から現状の課題を見出すことはできたと考えている.当初計画では,3つの流砂解析を適用する予定であったが,先行して実施した2つの流砂解析で多くの問題が見出せたため,まずは2つの解析モデルで対応を考えるのが良いと判断した.また,解析モデルの検証材料となる新規の水路実験については,予定通り準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に見出された課題をもとに,まずは流れの解析法の精度アップを進める.改良した解析モデルをSchalko博士の実験に適用することで,実験結果との比較検証から精度向上を図る.流れの解析法の問題がある程度解消できれば,流砂解析について粒子追跡型非平衡流砂モデルの計算負荷軽減のため,平衡流砂モデルと組み合わせたモデルを構築する.局所洗堀箇所は非平衡モデルを活用し,他の箇所は平衡流砂モデルで計算することで,その再現力を検証する.水路実験を同時に行い,データが収集できた段階で,解析モデルの検証材料として活用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会等がオンライン開催となり,また打合せなども感染症の影響で往来が不可となったため,これらに関わる経費が執行できなかった.また,論文投稿するレベルでの十分な成果が得られていないため,投稿費を利用できていない.論文投稿を進め,成果発表のために費用を利用したいと考えている.
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