研究課題/領域番号 |
21K04287
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
金井 昌信 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20375562)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 避難 / 風水害 / 防災意識 / 災害犠牲者 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
近年、毎年のように大規模風水害が発生しており、100人前後の犠牲者が生じている。この現状に対して、住民の適切な避難を促す対策が推進されているが、その多くの対策方針は「防災上、理想的な住民であること」を求めるものであり、「防災上、理想的な住民であれば、災害時に適切な対応をとることができる」ことを前提としたものである。 本研究では、風水害による犠牲者をださないことのみに主眼をおき、上記のような方針とは異なるアプローチ、すなわち「平時の防災意識等のあり様に依存しない」「災害時に適切な対応をとることができないことを前提」として、風水害時の対応行動として住民が事前に検討しておくべき内容をとりまとめたマニュアルを開発することを目的としてる。 令和3年度については、各自治体が公表しているハザードマップに記載されている避難行動に関する記載内容を把握する現状分析と、河川はんらんによる浸水が想定されているが、自宅2階に留まること(垂直避難)で命の危険を回避することができる地域を対象に、合理的な身の守り方(事前検討マニュアル)を検討し、それを地域に定着させるための実践的な研究をおこなった。 前者の分析により、地域の浸水特性に応じた避難行動のあり方が記載されていたり、地域特性にかかわらず一般的な避難の知識(警戒レベルに応じた理想的な対応など)のみが記載されていたり、または特に避難行動に関する記載がなかったり、と自治体によって大きく異なる現状にあることが確認された。また後者の実践においては、自宅の2階で水害をやり過ごすことができる地域においては、地域住民自身も避難所への避難ではなく、自宅待機(垂直避難)が現実的対応であると認識している現状を把握し、それを前提とした地域の避難対応指針を作成・定着することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でモデル地域住民からヒアリング等をする機会が制限されてしまったが、おおむね順調に研究をすすめられている。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、浸水リスクが比較的低い地域を対象に、事前検討マニュアルの作成、その効果計測を行っているが、令和4年度においては地域内の広い範囲で3メートル以上の浸水が想定されている、すなわち自宅に留まっていては命の危険性が高い地域を対象として、同様のマニュアル作成、その効果計測を行っていく予定である。 なお、避難行動や避難計画に関する実践の実施効果は、本来であれば、実際に災害が発生しそうな状況においてどのような行動をしたのかを把握することでしか計測することはできない。しかし、そのような機会は限定的であるため、新たな実践実施効果の計測指標についても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で現地調査を十分に行うことができなかったため、そのために確保していた交通費および現地調査結果の取りまとめ作業の人件費・謝金を支出することができなかった。 感染状況が落ち着き次第、計画とおりに支出していく予定である。
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