研究課題/領域番号 |
21K04288
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松島 格也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60303848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シェアリングエコノミー / 自動車保有 / 交通市場 |
研究実績の概要 |
初年度はカーシェアリングサービスに着目し,カーシェアリングサービス市場が成立する条件を理論的に検討する.具体的には,カーシェアリングサービスを提供するスポット市場において,提供される車と利用者とがマッチングされるメカニズムを待ち行列モデルを用いてモデル化した.カーシェアリングサービスを利用する場合,サービスの需給関係により消費者が必ずしも利用しようと思ったタイミングで利用できるとは限らない.利用する際の期待待ち時間の大きさによって,利用者がカーシェアリングサービスを利用するかその他の交通手段を利用するのかを決定した.あるスポット市場で多くのサービスが供給されると考えた利用者は当該のスポット市場を訪れてカーシェアリングサービスを利用し,また利用者の増加を予想するサービス供給者は当該市場に配置する車の数を増加させる.こういった需要と供給の増加はサービス利用のための期待待ち時間という取引費用の減少を通じて,より多くの利用者やサービス供給をもたらす,ポジティブフィードバックメカニズムが機能する.このような市場取引に伴う規模の経済性が存在する場合,市場における需給関係には複数の均衡解が存在する可能性がある.このような取引費用の減少を通じた規模の経済性に着目して,カーシェアリングサービスの成立条件を理論的に検討した.さらに,自動車保有を諦めてカーシェアリングサービスに移行する利用者数の変化から,カーシェアリングサービスの進展が社会における総自動車台数に及ぼす影響について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーシェアリングサービスを提供するスポット市場において,提供される車と利用者とがマッチングされるメカニズムを待ち行列モデルを用いてモデル化することに成功した.取引費用の減少を通じた規模の経済性に着目して,カーシェアリングサービスの成立条件を理論的に検討したけっか.自動車保有を諦めてカーシェアリングサービスに移行する利用者数の変化から,カーシェアリングサービスの進展が社会における総自動車台数に及ぼす影響について評価できた・
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今後の研究の推進方策 |
UberやGrabといったサービスは,従来のタクシーのようにサービス供給に用いられる自動車がサービス提供のみに利用されるサービスとは異なり,通常は自らの移動のために利用する自動車をサービス供給に提供することもできるという特徴をもつ.実際,自動車を保有する消費者が,自らの隙間時間を活用してライドシェサービスの供給者としての役割を果たすことが,こういったサービスのメリットの一つであろう.その一方で,当該の消費者は自ら所有する自動車を運転せず,他の消費者が提供するライドシェアサービスを需要者として利用することもできる.このようにライドシェアリングサービスは,個々の消費者がサービスの供給者側にも需要側にもなりうるという,他の交通サービスにはない特徴を持つ.次年度は,このようなライドシェアリングサービスの市場構造を二面市場モデルとして定義し,消費者がサービス供給側になるか需要側になるかという選択行動を通じて市場が成立するメカニズムを分析する.その上で,ライドシェアサービス供給を行うためにあらたに自動車を保有するといった可能性をふまえ,ライドシェアサービスの普及と社会における総自動車台数との関係を分析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において当初予定した実態調査のための出張がとりやめに,ならびに学会発表がオンラインとなったため
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