研究課題/領域番号 |
21K04300
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
兵藤 哲朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40218748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宿泊旅行統計 / インバウンド / コロナ禍 |
研究実績の概要 |
2021年度は,宿泊旅行統計の2021年7月データまでを入手し,コロナ禍の影響分析を開始した.これまですでに2007年1月から2018年12月までの144ヶ月分のデータに加え,31ヶ月分が加わったことになる.分析結果から,コロナ禍で2020年度春先は極端に需要が減り,秋にかけて"GoToキャンペーン"の効果もあり,多少持ち直したことを確認できた.しかし感染再拡大ごとに需要減となることが繰り返されたことも分かった.モデル分析としては,①北陸新幹線開業効果の市区町村単位の補足を重回帰分析で手掛けた.②目的地選択も市区町村を選択肢とする集計ロジットモデルを推定し,コロナ禍前後の推定パラメータの変化から,より近場が選ばれる傾向にあることが確認できた.③これも市区町村単位で宿泊旅行施設の有無を選択肢とするバイナリー集計ロジットモデルを推定したが,コロナ禍前後では施設数に大きな変化はなく,期待した効果を計測することはできないことが分かった. 本研究は2023年度が最終年度なので,2023年夏頃までのデータを取得し,コロナ禍収束期の宿泊旅行需要の変化を補足する予定である.当初予定した以上にコロナ禍収束は遅延しており,特にインバウンド需要については完全終息を前提とした解析は困難と思われるが,反面,国内観光需要のコロナ禍後の質的かつ量的な変化を把握する絶好の時期に研究遂行ができたと考えている.なお,一部の成果は2022年5月に発行の土木学会論文集に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究最終年度の2023年にはコロナ禍完全終息を見越していたが,想像以上に影響の回復に時間を要している.しかし2021年7月までのデータを追加した分析を2021年度に行うことができたし,土木学会論文集の論文掲載を果たすこともできた.また2021年度の修士論文で本分析を扱うことで各種モデリングの方法論開発は順調に推移している.これらから判断して,「おおむね順調に進展」と見なせよう.
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今後の研究の推進方策 |
本研究はコロナ禍と宿泊旅行需要の時系列関連性を補足することを第1の目的としている.それ故,最終年度の2023年度におけるコロナ禍の影響で研究成果や分析の方向性も変わる可能性がある.しかし宿泊旅行統計からコロナ禍影響を把握する類似研究は殆ど存在しないと考えており,本研究の学術的・実用的な価値は維持できると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析において高性能PCの使用を予定していたが,2021年度の解析では不要であることが判明した.しかし2022年度にはビッグデータ解析用の方法論の適用を考えているため,一年遅れでこの支出が達成される見込みである.また,2021年度は土木計画学研究発表会など,参加予定だった国内学会が軒並みリモートになったため,旅費の支出がなく,これも繰り越しとならざるを得なかった.
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