研究課題/領域番号 |
21K04309
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷川 裕修 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00533374)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 交通安全 / 視覚的注意 / 仮想現実 / 通学路 / 歩行者 |
研究実績の概要 |
本研究では,視覚からの大量の入力情報を取捨選択して,適切な対象に注意を向ける働きに大きく寄与する視覚的注意のメカニズムが道路空間においてどのような対象に対してどのように働くのかを明らかにすることを目的とする. 具体的には,1)実道路環境での視線・眼球運動計測実験を実施し,この結果と撮影画像から推定した顕著性マップによって注意を惹きやすい対象を特定する.2)実験条件をコントロール可能なVR環境での視線・眼球運動・脳活動等の計測実験を実施し,この結果と注意を惹きやすい対象との時系列的な関係性から注意のメカニズムがどのように働くかを解明する. 本研究により,「視覚的な交通安全対策に対して道路利用者がどのように対策を認識して,実際の交通行動に反映させているのか」という交通安全対策に対する根源的な問に対して,部分的ではあるが,解答が可能となることが期待される.その結果として,地域における1)道路空間の安全性評価と対策の検討と,2)効果的な交通安全教育の実施に大きく寄与することが可能となる. 本研究は大きく3つの段階からなる.すなわち,【フェイズ1】道路空間において注意を惹きやすい対象を特定,【フェイズ2】特定した対象がどのようなメカニズムに基づいて注意を惹いているのかを解明,【フェイズ3】モデル地区を設定し,フェイズ1と2の成果をもとに地区全体の安全性評価を試行する,の3段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては,主に【フェイズ1】に対応するものとして,1)道路空間において注意を惹きやすい対象を特定するための文献調査と,【フェイズ2】に対応するものとして2)実写360度動画を用いたVRシステムを構築して予備実験を実施するとともにその結果を分析した. 結果として,以下の3点が明らかとなった.(1)積雪と可動物のいずれかが負荷増となった場合,不動物AOI(Area of Interest,興味関心領域)に配分可能な認知資源が相対的に減少した結果,不動物AOIの合計注視時間割合が減少する.(2)積雪と可動物が同時に負荷増となった場合,視覚的注意の働きが低下し,不動物AOIの合計注視時間割合が増加する.(3)不動物に対する交通安全意識はAOI分析の結果と整合的である. 脳活動計測結果の分析については課題が残るものの,以上のような成果を得たことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
脳活動計測結果の分析方法について関連分野のサーベイを進めるとともに,予備実験の結果を踏まえて本実験を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の支払請求額での機材および分析用ソフトウェアの調達が困難なため,前倒し支払請求を行った.その結果,次年度使用額が生じた. 次年度において,本実験の実施や研究成果の発表にかかる経費に使用する予定である.
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