研究実績の概要 |
本申請研究は,浄水処理効率の低下を引き起こすアオコ(ミクロキスティス)の除去方法の開発を目的とするものである。当該年度では主に,ミクロキスティスの群体形成に寄与する強結合性細胞外多糖類(tightly-bound extracellular polysaccharides; TB-EPS)をミクロキスティス細胞から単離し,その化学組成や成分について検討した。 2021年の7月から10月の間,茨城県の千波湖で発生したアオコ(主にミクロキスティス)を採取し,NaCl・温水法によってミクロキスティス細胞からTB-EPSを単離し,凍結乾燥して粉末試料とした。このTB-EPSの表面官能基を熱重量示差熱分析装置およびフーリエ変換赤外分光光度計によって調べたところ,主にカルボキシ基が存在していることがわかり,この結果はTB-EPSの元素分析(C, H, N, O)結果で示された高い酸素含有量(O = 48%)からも裏付けられた。また,100 mg/Lに調整したTB-EPS水溶液中のCOD,TNおよびTP濃度を測定したところ,それぞれ45 mg/L,6.8 mg/Lおよび2.2 mg/Lとなり,比較的高い有機物を含有していることが見出された。他方,光照射の有無とミクロキスティスの細胞密度との関係を調べるための予備実験も行った。その結果,ミクロキスティスの細胞密度は,暗条件で培養することで減少することが示唆された。 以上のように,当該年度ではミクロキスティスの除去方法を開発する上で重要な役割を果たすTB-EPSの化学組成・成分について検討した。今後は,光照射制限の下,培養液中のTB-EPSやカチオン濃度制御が,ミクロキスティスの群体形成と浮揚性に及ぼす影響について詳細に検討する予定である。
|