本申請研究は,アオコの除去に主眼をおいた浄水処理プロセスの確立を目指すものである。実験に使用するアオコ (ミクロキスティス)は,茨城県の千波湖ならびに千葉県の印旛沼から採取した試料を用いた。アオコから抽出した強結合性の細胞外多糖類 (TB-EPS)およびカチオン (Ca(II))添加によるミクロキスティス (野生株)の浮揚除去実験を主に実施した。その結果,Ca(II)の添加量の増加 (250および500 mg/L)に伴いミクロキスティスの相対浮揚率 (RB25)は90%以上の高い値を示したものの,TB-EPS (200 mg/L)を同時添加すると,Ca(II)濃度 250 mg/L添加系において浮揚性が低下 (55%)することがわかった。実験に用いたミクロキスティス (野生株)はもともとEPSを有しており,そこにTB-EPSを添加することでEPSが過剰量になり,浮揚性の低下を引き起こしたと考えられる。このため,今後,カチオンとEPSの最適な添加量を見出すための実験が必要であると言える。次に,Ca(II)添加 (500 mg/L)によるミクロキスティスの浮揚速度を計測した。ミクロキスティスの浮揚速度は,Control系と比較しておよそ6倍もの高い値を示し,これはミクロキスティスの群体サイズの増加によるものと推察された。 これまでの結果をまとめると,ミクロキスティスの浮揚性はカチオンおよびEPS添加を基に,前培養期間や光照射条件を変化させることで容易に制御できることを見出し,この手法は新たなアオコ除去法として有用であることがわかった。
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