本研究は、極めて高い毒性を持ち、なおかつ希少な貴金属資源であるにもかかわらず、世界的に無害化・回収固定技術の確立されていないオスミウムに着目し、それを含有する廃棄物について、超臨界水及び超臨界二酸化炭素を複合的に利用した新規な処理技術を開発することが目的である。 まず模擬オスミウム廃棄物の超臨界水酸化反応特性を検討し、オスミウム化合物の酸化挙動及び共存物質の影響を明らかにした。そのうえで最終年度では実際のオスミウム含有廃液及び廃固体に対して本処理方法を適用し、実処理を考慮する上での課題点の抽出と解決に向けた検討を行った。とりわけ、オスミウム化合物の酸化を阻害する要因を整理した。 また、四酸化オスミウムの超臨界二酸化炭素抽出に関する検討を行い、各種操作条件が四酸化オスミウムの抽出特性に及ぼす影響を明らかにした。最終年度ではオスミウム付着固体試料について抽出挙動の検討を行うとともに、実際のオスミウム含有廃液及び上記超臨界水酸化検討における処理液を被抽出試料として供試し、実処理を想定した四酸化オスミウムの回収挙動について検討した。 本研究期間全体を通じた検討により、オスミウムを含有する廃棄物について、超臨界水酸化及び超臨界二酸化炭素抽出の併用によって廃棄物中のオスミウム濃度を充分に低減し、有価物である四酸化オスミウムを効率的に回収できることを示した。さらに、実際のオスミウム含有廃棄物の処理プロセスにおける適用可能性を示し、解決すべき課題点を抽出した。本研究の成果は、従来の技術では処理が困難であるオスミウム廃棄物について新規処理プロセスを提案しその適用可能性や課題点を示すものであり社会的意義が大きい。加えて、超臨界流体中でのオスミウムの挙動に関しては、筆者の研究以外にこれまでに検討報告例が少なく、物質合成や反応工学の分野にも貢献し得る学術的に重要な意義のある知見である。
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