本研究では,薬剤耐性菌の中でも最も重要な耐性菌の1つであると考えられるカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)に着目し,水環境中におけるCREの存在実態を明らかにするとともに,水環境中に存在するCREの耐性遺伝子解析および多剤耐性の評価を行う。さらに,水環境中に存在するCREの制御方法について考察を加えることを研究の目的とする。今年度は,以下の3つの項目について調査・検討を行った。 ① 水環境中におけるCREの耐性遺伝子型の解析:下水から得られたCREの単離株について,Multiplex PCRによりカルバペネマーゼの遺伝子型について調べた。耐性遺伝子としては,KPC,NDM,IMP,VIM,OXA-48-like,GES型を対象として分析を行い,医療分野で検出されている遺伝子型との比較を行った。 ② 水環境中のCREに関する多剤耐性の評価:下水から得られたCREの単離株について,ペニシリン系,セフェム系,モノバクタム系,カルバペネム系といったβラクタム系抗菌薬を中心として,その他にテトラサイクリン系,ニューキノロン系,アミノグリコシド系などの抗菌薬に対する多剤耐性プロファイルについてデータを蓄積した。 ③ 水環境中CREの制御方法に関する検討:公共下水道や農業集落排水施設で主として採用されている塩素消毒に関して,CREに対する不活化効果を調べた。カルバペネム耐性大腸菌とともに,抗菌薬への薬剤耐性を持たない感受性大腸菌を下水から単離し,それぞれ塩素消毒による不活化効果を調べるとともに,カルバペネム耐性大腸菌と感受性大腸菌の塩素消毒への感受性に関して比較を行った。
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