研究課題/領域番号 |
21K04320
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
黒田 啓介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30738456)
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研究分担者 |
端 昭彦 富山県立大学, 工学部, 講師 (70726306)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水浴プール / 水系感染症 / 汚染動態解析 / 人工甘味料 |
研究実績の概要 |
学校やスポーツクラブなどの様々なプールの水質汚染とその季節変化の実態、および施設や利用者の特性に応じた水質の特徴を化学的・微生物学的水質分析から明らかにする。このため、本年度は以下を実施した。 1.プール水水質の実態調査:小学校、公園、公営水泳競技場、スポーツクラブなど13施設・21ヶ所のプールで春・夏・秋・冬と経時的に調査し、合計50試料を得た。試料の内訳は、屋外の使用時プールが8試料、屋外の非使用時プールが15試料、屋内プールが17試料、屋内のジャグジー・お風呂が10試料である。採取した試料は、各種ウイルスや指標微生物、医薬品・人工甘味料、エンドトキシンを含む微生物的・化学的分析に供した。また、調査したプール施設に聞き取りを行い、プール利用者の数やその季節変化・経年変化、利用者の特徴(年齢層など)、プール水の処理方法、補給水量などを調査した。これらの結果から、各種微生物や化学的汚染マーカーの濃度のプール使用期間・非使用期間における変動特性、2021年夏のまん延防止等重点措置期間中の濃度変化等を把握した。 2.プール水中汚染マーカー群の挙動解析:光分解性調査の予備試験として、石英ガラス管に化学マーカーを含む水試料を入れ屋外に設置し、経時的に濃度を分析した。 3.汚染マーカーを用いたプール水の汚染源の解析:化学マーカーの検出濃度とプール容積・補給水量、利用人数から、利用者一人あたりの汚染負荷と年齢層等の関係に関する予備的解析を実施した。 これらの成果について学会発表を行った(石黒ほか、第56回日本水環境学会年会、高松ほか、第56回日本水環境学会年会)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象とした小学校やスポーツクラブ等のプールでは、地元教育委員会やプール管理者の協力のもとに年間を通した採水調査を行うことができ、当初計画通りに試料を得ることができた。まだ初年度であるが、2021年度以前に行ったプール水調査データを合わせると合計111試料となり、今後予定する調査を含めると水質の季節変動やプール特性・利用者特性別の水質特性・汚染特性の解析は十分に可能と考える。また、プール管理者の協力を得てプール施設の特性や利用者の特性等について情報を得ることができた。今後、水質データとこれらの聞き取りデータをより詳細に比較考察する予定である。プール水中汚染マーカー群の挙動解析については、汚染マーカー群の濃度減衰特性を調べるための予備実験を夏季の屋外で実施したところ、天候不順で日照量が安定せず、また降雨の影響が想定より大きかった。今後も同様の状況になることが懸念されたため、屋外実験に加え模擬太陽光を用いた室内実験も行うこととした。水質分析やデータ解析は順調に進捗しており、学会発表を行うなど、研究発表も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
プール水水質の実態調査については、2021年度の調査結果から代表的な汚染度と判断された10箇所程度のプールについて集中的に調査する。使用時プールについては水質の日内変動や、水処理過程での水質変化を評価する。これらのデータは、2021年度までに得た水質データとも合わせ、屋内・屋外の別、水処理方法、利用者数、利用者特性等の観点から汚染物質の濃度や起源、一人あたり負荷量やそれらの季節変化等を詳細に解析する。汚染マーカー群の挙動解析については、実際のプール水を用いた屋外実験・屋内実験を行い、様々な塩素濃度における汚染マーカー群の濃度減衰特性を調べる。これらの実験から得られたプール水中における各種物質の減衰速度等をもとに、実際のプール水における汚染物質の排出や動態についてより正確に評価する。これらの結果をプール施設管理者へフィードバックしつつ、プールの施設特性や利用者特性に応じた水質管理方法や利用者への注意喚起等、プール利用における安全・安心の確保に資する対策を検討する。
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