本研究の目的は学校やスポーツクラブなどの様々なプールの水質汚染とその季節変化の実態、および施設や利用者の特性に応じた水質や汚染の特徴を化学的・微生物学的水質分析から明らかにすることである。2023年度は、これまでの調査結果を鑑み、代表的な数カ所のプールで引き続き調査を行い、屋内・屋外の別、水処理方法、利用者数、利用者特性等の観点から詳細に解析した。また、2023年度から新たに消毒副生成物のハロ酢酸を分析した。ハロ酢酸類の結果については、プール水中で塩素系ハロ酢酸(モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸)が多く検出され、特にジクロロ酢酸の検出率が97%と高かった。臭素系ハロ酢酸の検出率は低く、ヨウ素系ハロ酢酸は検出されなかった。ハロ酢酸類は屋内プールにおいて最も高濃度となったが、これはジャグジーで高濃度に検出される傾向にある医薬品類や人工甘味料と異なった。ハロ酢酸類は有機物と塩素が長期間の反応によって生成するため、滞留時間の短いジャグジーでは濃度が高くならなかったためと考えられた。モノクロロ酢酸濃度は医薬品・人工甘味料の濃度と相関係数が高かった(最大0.76)ことから、モノクロロ酢酸は水浴者から導入される有機物と塩素の反応によって生成したと考えられる。一方、ジクロロ酢酸は結合塩素濃度と強く相関した(相関係数0.71)。これは、モノクロロ酢酸が時間をかけて塩素と反応することでジクロロ酢酸が生成することと調和的であった。これらに加え、大量の試料水から微生物や動物DNAを濃縮する手法、塩素と光が同時に存在する反応場における医薬品・人工甘味料の濃度減衰、プール水の水質向上に適用しうる水処理技術としての可視光駆動光触媒についても検討した。これらの結果は逐次プール施設管理者等へフィードバックした。
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