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2022 年度 実施状況報告書

AIと数値シミュレーションを統合した塩害環境予測技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K04335
研究機関琉球大学

研究代表者

崎原 康平  琉球大学, 工学部, 准教授 (20647242)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード塩害 / 飛来塩分 / 機械学習 / 風況 / 波浪 / MSMデータ
研究実績の概要

本年度では,観測された飛来塩分データと各種環境情報(風況や波浪等)から機械学習を用いて2ケースの飛来塩分予測を行った。1つは沖縄県国頭村辺野喜暴露場で長期観測された飛来塩分データを使用した予測(以後,辺野喜試験と称す),もう1つは全国で観測された飛来塩分データを使用した予測(以後,全国試験と称す)である。また,Web上で公開されている環境情報データの中で,気象観測所より観測点の密度が高いメソ数値予報モデルを使用した環境データ(以後,MSMデータと称す)による予測を行い,本提案手法の有効性について検討を行った。
その結果,ベイズ最適化によるハイパーパラメータチューニングを行ったRandom Forestを飛来塩分予測に適用することで,辺野喜試験,全国試験ともに計算時間が短くかつ汎化性能の良い結果を得ることができた。また,MSMデータを使用することにより,飛来塩分を観測したい地点から最寄りの気象観測所が遠い場合においても,観測地点の風況データを取得することができる。またそのデータを機械学習の学習データとして用いることで,飛来塩分の予測精度向上を図ることができた。さらに,特徴量の重要度を検討することにより,本研究において最も予測に影響を与えている環境データは,有義波高であることが明らかとなった。
上記の研究成果は,コンクリート工学年次論文集やコンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集等の査読付論文として掲載された。また,国際会議である15th World Congress on Computational Mechanics (WCCM) や,国内では日本建築学会全国大会および九州支部研究発表会等で研究発表を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

機械学習による飛来塩分予測については,地域毎の環境作用を考慮した定量的な検討・予測を実施することができた。しかしながら,本検討範囲はその地域に飛来する塩分の予測であり,いわゆる「マクロな領域における飛来塩分予測」であるが,近年では,各部材における腐食環境が異なることが指摘されていることから,今後は各部材毎に異なる環境作用を考慮した飛来塩分予測に着手する予定である。また,機械学習だけでないく数値シミュレーションを援用した飛来塩分予測手法の開発も行う。本研究課題の進捗状況については,本年度までに得られた研究成果を取り纏めるとともに,査読付き論文集を2編投稿し,掲載されたことから,概ね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

鉄筋コンクリート構造物において,各部材に付着する塩分は,気象条件や周辺環境,さらに構造物の形状・寸法や位置等により,部材毎に異なることが知られている。また,2022 年 11 月に改定された建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事 2022では,部材毎に劣化環境区分が定められていることから,部材毎に環境外力や劣化速度を詳細かつ定量的に把握する重要性は,今後さらに高まることが考えられる。
以上の背景より,昨年度は柱や梁および庇から構成されている単純な鉄筋コンクリート構造物を対象に,自作の薄板モルタル供試体(以後,供試体と略す)を用いて各部材の付着塩分に関する検討を行っている。その結果,季節毎に異なる風況(風向,風速) や周辺環境,さらに部材の寸法・位置が各部材毎に付着する塩分に与える影響について機械学習も援用しながら検討している。
一方,各部材の付着塩分を数値解析的に把握する研 究も数多く行われている。しかし,数値解析的な研究については,そのほとんどが土木構造物を対象としており,鉄筋コンクリート構造物における各部材に付着する塩分に関する検討は数少ないのが現状である。
そこで次年度では,沿岸域にある鉄筋コンクリート構造物(以後,構造物と称す)における各部材に付着塩分を,供試体を用いて測定する。さらに,風況や周辺 環境,部材の形状・寸法・配置等が各部材の付着塩分に与える影響を把握するために,構造物周辺の風況解析を行う。さらに,得られた風速場を用いて飛来塩分粒子を模擬した粒子拡散解析を実施し,雨掛りも考慮した各部材に付着する塩分の検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍による研究活動の制約等で,実験にかかる資材費,実験サイトへの旅費等の費用が年度内で執行できなかった。本予算に関しては,次年度の実験に係る諸費用として執行予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 周辺環境を考慮した沿岸域の鉄筋コンクリート構造物における各構造部材に付着する塩分に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      請舛慧,崎原康平,豊田颯太,東舟道裕亮
    • 雑誌名

      コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集

      巻: 22 ページ: 321-326

    • 査読あり
  • [学会発表] 沿岸域における鉄筋コンクリート構造物の各部材に付着する塩分の輸送シミュレーション2023

    • 著者名/発表者名
      豊田颯太,崎原康平,請舛慧
    • 学会等名
      日本建築学会九州支部研究報告
  • [学会発表] 各構造部材の設置高さが付着塩分量に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      請舛慧,崎原康平,豊田颯太,東舟道裕亮
    • 学会等名
      日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集
  • [学会発表] 鉄筋コンクリート構造物の各構造部材に付着する塩分量と風速に関する解析的検討2022

    • 著者名/発表者名
      豊田颯太,崎原康平,請舛慧,東舟道裕亮
    • 学会等名
      日本建築学会九州支部研究報告
  • [学会発表] Relationship between the amount of airborne chloride deposited on the surface of each structural member and its surrounding environment2022

    • 著者名/発表者名
      Kei UKEMASU, Kohei SAKIHARA, Sota TOYODA, Yoshitomo YAMADA
    • 学会等名
      15th International Symposium between China, Korea and Japan on Performance Improvement of Concrete for Long Span Structure
    • 国際学会
  • [学会発表] Wind simulation for airborne chloride deposition on reinforced concrete building in coastal areas2022

    • 著者名/発表者名
      Sota TOYODA, Kohei SAKIHARA, Kei UKEMASU, Yoshitomo YAMADA
    • 学会等名
      15th International Symposium between China, Korea and Japan on Performance Improvement of Concrete for Long Span Structure
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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