研究課題/領域番号 |
21K04348
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研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
宮内 博之 国立研究開発法人建築研究所, 材料研究グループ, 上席研究員 (40313374)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロドローン / 建物調査 / 狭所空間 / 操縦 / ガイドライン / 人材教育 |
研究実績の概要 |
本研究では屋内狭所空間の調査を対象としたマイクロドローンの活用と社会実装を目的とし,2022年度は①建築狭所空間モデルを利用したマイクロドローンによる飛行性能と調査検証実験、及び②著者が参画した(一社)日本建築ドローン協会「建築狭所空間ドローン利活用実施ガイドライン(案)・同解説」の制定をした。 ①については次に示す。天井裏・居室・床下空間におけるマイクロドローンの飛行性能検証を検証するために、屋内狭所模擬空間モデルを製作した。本モデルは縦2m×奥行き2m×高さ×2mの寸法で、その中に狭所空間、ダクト、天井吊ボルトの設備機器、クラックスケールや汚損、錆汁等を再現した画像を貼り付けた空間である。この空間において、産業用とホビー用マイクロドローンを用いて、その飛行性能と操縦技能の異なる操縦者による劣化調査を実施した。実験の結果、模擬空間内ではホビー用は飛行することは不可能であり、産業用は壁面に衝突しながらも飛行及び模擬ひび割れの画像の取得が可能であった。一方、屋外で一般的なドローンを操縦可能な操縦技能を持つ者でも、狭所空間数十㎝内では飛行が困難となり、マイクロドローンを利用するためには高度な操縦技能が必要と考えられた。 ②について、マイクロドローンを建築狭所空間に利用する際の、実施体制の構築、点検・調査実施計画と実施方法、安全管理等の業務標準を示すことを目的とし、「建築狭所空間ドローン利活用実施ガイドライン(案)・同解説」の制定をした。本ガイドラインは、第1章総則、第2章マイクロドローンと制御、第3章マイクロドローンを使用するうえで必要な電波利用の条件、第4章マイクロドローンによる点検・調査の種類、第5章マイクロドローンによる定期点検・調査業務の運用方法、参考資料)マイクロドローンの模擬運用事例から構成される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書に記載した2022年度の計画に対する研究成果の自己点検の評価は以下の通りであり、当初計画した以上に進展している。 <2022年度の当初の計画>建築狭所空間を想定したマイクロドローンによる実証実験を行う。前年度開発したマイクロドローンを用いて、ドローン操縦と点検調査技術に関わる実証実験を行い、ドローンの改良と点検調査の向上を図る。実験場所は様々な建築狭所空間を選定して実際の点検環境と同じ条件で実施し、既存点検調査とドローン調査の定量的な比較を行う。取得したデータは最終年度のドローン活用ガイドラインに使用する。 <2022年度の成果> 当初の計画通り、建築狭所空間を想定したモデルを製作し、ドローン操縦と点検調査技術に関わる実証実験を行い、本実験の狭所空間モデルは初心者には難易度が高いが、高い技術を持った操縦者には効果的であることを示した。また、操縦者の技能を区別するうえで有効であり、操縦者の育成への活用が期待できる。一方で、マイクロドローンの使用の条件として、風のある環境では注意が必要であること、また墜落時の復旧とバッテリーの脱落防止はマイクロドローンの基本性能として必要であることがわかった。また、2023年度の目標であった建築狭所空間を対象としたドローンの安全対策、電波法に基づく開局申請、ドローンの制御・操縦・運航管理、点検調査利用方法に関わるドローン利活用のガイドラインの作成を2022年度に達成することができた。また、本ガイドラインは連携先の(一社)日本建築ドローン協会を通して、ホームページから無料でダウンロードできるようにし、マイクロドローンの普及活動を推進することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は当初予定以上に研究が進んだため、2023年度はマイクロドローンの社会実装に向けて新たな研究を進め、最終年度としてとりまとめる。内容は以下の通りである。 「建築狭所空間ドローン利活用実施ガイドライン(案)・同解説」を活用した人材育成のあり方の検討を進める。本ガイドライン中に記載されている第4章マイクロドローンによる点検・調査の種類、第5章マイクロドローンによる定期点検・調査業務の運用方法に基づいて、狭所空間での業務遂行の可能性、及び飛行安全性について検証を行う。なお、実証実験においては日本建築ドローン協会の協力を得て、建築関係者とドローン関係者と連携をし、ドローンの実運用を想定した活動を行う。 マイクロドローンは操縦技能が要求される。このため、ドローンによる建築物調査方法の事前検討,及び操縦者の技能に関わるドローンによる近接調査の飛行訓練等を仮想空間で検証するため,ドローンフライトシミュレーターを開発し,その性能を仮想空間内で実験を行う。具体的には、対象空間は屋外及び屋内とし、ドローンの目視外飛行に対する飛行性能や撮影状況について検討する。 マイクロドローンを含め、ドローンを活用する際の職業やその役割、社会的地位の向上等に関わるスキルに関してはこれまで検討されてこなかった。これより本研究では、ドローン関連の求人の実態を把握し、ドローン活用促進のための建築分野のドローンキャリアマップの作成を試み、その考察を行う。ドローンキャリアマップについては、既存職種、ドローン関連職種、ドローンの未来職種を、運用系、ソフトウェア系、ハードウェア系、周辺サービス系の分類し、関連性・専門業務・統括管理業務でグレードに分けて検討を行う。 最後に、上記のマイクロドローンの性能・技能・フライトシミュレーター・キャリアについて総合的に検討し、最終年度のとりまとめを行う。
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