本年は,耐震性能の向上を目的とした下部構造体の最適化について,昨年度構築した多目的最適化手法のツールを更新した。複数の例題で検証を行い,汎用性を向上させることができた。また,計算時間の削減が課題となることを確認した。解決手段は着想したが,具体的な開発・検証に時間を要し,結果の整理は次年度以降に持ち越すこととなった。 これ以外に,線材のFEMモデルを入力として接合部形状(ソリッドモデル)を作成するツールを構築した。これらを用いて平面寸法が60cm×90cmの大きさを持つ自由曲面屋根のラチスシェル屋根モデルを製作した。モックアップモデル作成に時間を要したため,振動台実験の実施まで到達できなかったが,3Dプリンタを用いた自由形曲面形状作成の施工手順や精度検証を確認することができた。 研究期間全体を通じ,接合部種類のクラスタリングを施した屋根形状の決定と支持構造の耐震性能を最適化できる手法の基本を構築した。シミュレーションにとどまらず,物理モデルとして出力できる手段まで実装した。これににより,耐震性能に加え,施工合理化を考慮した設計手法の展開が期待できると考えられる。
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