本課題では,風力発電設備支持物に発生する日常的な振動に対して,部材応力や疲労損傷 度の低減を図ることを目的とした振動制御技術の開発を行った。本研究の成果は次のとおりである。 1. 実存する風力発電設備のタワー部において,加速度センサーを設置し,タワー各点における応答加速度を計測した。測定対象は,福岡県北九州市に建設されているタワー高さ67mの風力発電設備支持物とし,加速度センサーは概ね高さ20mごとに計4箇所に設置し,風速および風向はSCADAデータから取得した。計測は毎時00分および30分から5分間の計測を長期間行い,設備の健全性診断,余寿命評価に資するデータを取得した。 2. 取得したデータから,日常的な発電時の風速と,その風圧力により生じるタワー各点の振動レベル(加速度)との関係性を明らかにした。また,計測対象とした風力発電設備支持物の振動特性を分析し,計測した風力発電設備支持物の固有振動数および減衰定数を算出し,実測値を基にした時刻歴応答解析モデルを構築した。 3. 構築したモデルにおいて,時刻歴応答解析を実施し,TMDによる振動低減効果の検証を行った。1箇所当たりのTMDの容量を小さくし,多点配置することによる振動低減効果について検証した。具体的には,TMDの質量や設置位置が,発電時の風外力により生じるタワーの加速度応答および変位応答に与える影響について明らかにし,効果的な振動低減のための多点TMD制御の方法について,質量比や配置の観点から検証した。 4. これまでの検討を踏まえ,実存する風力発電設備に効果的なTMDの要求性能(質量やストローク等)を明らかにし,実際の設置に供するTMDの開発に資する結果を得た。これらにより,風力発電設備支持物に対するTMD制御の活用の可能性を明確に示し,風力発電設備支持物の低サイクル疲労の抑制を行った。
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