梁降伏先行型の中低層の鉄筋コンクリート造建物を対象に,梁の上端に高強度鉄筋を用い,骨格曲線において二次剛性を発揮させることにより地震後の残留変形を抑制するRC梁を提案している。具体的には,地震により最大層間変形角が1/50rad.程度に達しても,残留変形角を無視できる程度の1/400rad.以下に抑えることを目指している。梁の上端筋をSD980程度の高強度鉄筋に置き替えると,下端の普通鉄筋が降伏した後も上端筋が弾性を保つため二次剛性を発揮させることができる。しかしながら,想定よりも大きな変形が生じた場合にも高強度鉄筋が弾性を保つために,梁の応力は変形の増大に伴って大きく上昇する。結果的にRCフレームに作用する層せん断力が大きくなり,柱のせん断設計が困難になる可能性がある。そこで,高強度鉄筋の降伏点を抑え,さらに梁下端の普通鉄筋(SD345)を半分に減らすことにより,梁の最大せん断力を抑制しながら二次剛性を発揮する改良型梁を提案した。改良型梁の加力実験を行い,上端筋にSD685を用いた試験体で残留変形の抑制と最大せん断力の抑制が同時に可能であることを確認した。 これまでに,改良型梁の解析モデルを回転バネを使ったモデルやMSモデルによって作成しており,履歴特性を概ね再現している。一方,建物の大変形時には柱脚にも塑性ヒンジが形成され残留変形が生じるが,柱の長期軸力による復元モーメントがRC建物全体の残留変形に影響を与える。このことから,残留変形を適切に評価できる1階柱の解析モデルを提案した。以上の柱梁の解析モデルを用いて,RCフレームの解析モデルを作成し,地震波による応答解析を行うことにより,改良型梁による残留変形の抑制効果について検討した。
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