研究課題/領域番号 |
21K04368
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宗方 淳 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80323517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表面色 / 光色 / PCCSトーン / オフィス空間 / リラックス空間 / 木漏れ日 |
研究実績の概要 |
先行研究で行っていた実験パラメーターを拡張した形で実験を実施した。1/5スケール模型にLED光源を配置し,無彩色壁面の下半分を有彩色面で覆って印象評価実験を行った。有彩色面は橙系と青系の2系統にそれぞれPCCS表色系の3トーンとした合計6色とした。また,印象評価の前提としてこの空間の用途の想定をオフィス空間とリラックス空間の2種として被験者に教示するものとし,用途の想定ごとに実験期間・被験者を分けた。核実験の被験者はそれぞれ20名である。先行研究では表面色と光色の組み合わせが橙系表面色と電球色というような同系統のほうがより好ましくなるという例もあったが,本実験の結果ではトーンによっては必ずしもそのようにならないことが示された。また,用途ごとに検討した結果,室用途の想定によって好ましさの判断ロジックが異なる結果も得られるなど,単なる知覚に基づく判断ではなく高次な認知プロセスによって評価が行われている結果も示された。このような事例はある利用目的に対する好ましさという総合評価の場合であることから,様々な観点の印象が,室用途に依存するものか否かといった判別も必要であるといえる。 一方,補完的な検討として通常の照明光に見られる白色光単体ではなく,周囲の樹木の葉っぱ越しに到達する木漏れ日を模した照明光について,今後の実験の予備段階として検討を行った。複数の有彩色フィルターの種別と白色光源との比率を操作した光源を作成し,最も好ましくなる条件を検証した。 以上の実験で得られたデータから,心理印象を予測する定量的な評価手法を引き続き検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験で用いた内装色は実務家が利用することが多いPCCSトーンから選定しており,定性的な結果ではあるものの内装色と光色の組み合わせが室印象に及ぼす影響に関する知見の蓄積は進んでいるといえる。また,室用途の設定が変わることにより,空間印象の好ましさの判断ロジックが異なるという傾向が見いだせたことは,心理的効果のメカニズムの解明に有用な示唆を与えたと考えられる。課題としては光色や表面色それ自体や,表面色からの反射光の物性と心理印象の間の関係の解明はまだ途上である。これは,上述したように室用途に対する認知も影響することから,用途ごとの関係性の定量的な把握が2年度以降の大きな課題である。 一方,人工照明に加えて昼光照明も含めたミックス光源を研究で用いることを想定し,建物外構の植栽越しに入射する木漏れ日を模した光源の開発も行えた。本検討では印象評価の対象を机上面と限定し,有彩色部分が顕著な発光面が視野に入らない状態であったが,空間の何処を見て評価をするのかということが重要であることが確認され,内装色と光色の組み合わさった空間の評価ロジック構築に有用な示唆が得られたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験ではPCCSトーンから3種を選んで実施したが,実務を想定した知見の蓄積のためにはより多くの種類を用いた実験データの蓄積が必要であり今後の研究で検討する。空間の何処を見るかという在室者の体勢,空間用途の想定や在室者の作業といった空間の前提,および光色と表面色の物性という三者を網羅した評価システムの構造化を改めて行い,その検証に必要とするデータを実験で収集する。その際,これまでの実験で用いてきた心理印象の評価項目の見直しや,心理印象では把握できない部分を生理量として抽出する手段の検討も行っていく。また,これまでの実験で用いてきた光色は,従来から用いられている電球色・白色・昼白色・昼光色という彩度の低い「白色」光であったが,より彩度の高い有彩色光源の利用も視野に入れて検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の状況下で学会参加や情報取得のための旅費が一切支出できなかった。また,測定機器の校正を先送りしたことや,論文掲載に至っていないことから次年度使用額が生じている
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