有彩色の対象面に有彩色光を当て,それを観察して対象の色彩とそれを照らす光色を知覚できるかを被験者実験で検討した。実験は完全な平面のみを見る場合と箱の内装面を見る場合とで行い,さらに対象面の隅に白色の紙片を置く場合も比較した。その結果,完全な平面で白色紙片がない場合は視対象と光色の色彩を適切に判別することができない一方で白色紙片があると判別が明確になる傾向が確認された。 また,光色と内装色の組み合わせが被験者の心理にもたらす効果の判断のプロセスのモデル化のため,これまでの実験で蓄積した内装色11色と光色3色に対する心理評価データに決定木分析を実施した。目的変数は「オフィス空間の好ましさと「リラックス空間の好ましさ」としてそれぞれ分析したところ,いずれの空間の好ましさもまず内装色の適否で判断し,第2段階は光色の高低で判断された。第1段階の内装色の適否は二つの空間で同一であり,第2段階の光色はオフィスは高色温度,リラックス空間は低色温度が好まれた。最終的な分岐の傾向としてはリラックス空間は内装色と光色が同系統が好まれることが明確である一方,オフィス空間は必ずしもその傾向はみられず,空間用途に応じた判断のプロセスが異なることが示された。 これまでの光色と内装色の組み合わせの実験は壁面の下半分のみを有彩色としていたことから,補足実験として壁面内の有彩色部分の割合を変えた実験も行った。その結果,面積割合が異なっても両者が同系統が好まれるというこれまでの傾向は再確認されたが,面積の主効果や面積の関連する交互作用が見られた印象評価項目は一部に留まった。 最後に,源を単一の光色とせず,白色光と有彩色光(緑色光)をミックスした条件での光源とした場合の心理評価に関する実験も緑色光を複数用いる形式の実験を実施し,最も好ましい緑色光の組み合わせの知見を得た。
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