研究課題/領域番号 |
21K04378
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中野 淳太 東海大学, 建築都市学部, 准教授 (30350482)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱的快適性 / 温熱環境適応 / 行動的適応 / 着衣調節 / 滞在状況 |
研究実績の概要 |
2022年度もコロナ禍の影響により、通常の使用状態のオフィスにおける実測調査が困難であったため、大学キャンパス内の空調されたラウンジにて行動的適応の調査を行った。2021年度は秋学期のみの調査であったが、2022度は春学期の6/21~7/19と秋学期の10/5~12/14に分けて実施し、前年度との比較を行った。調査日は同期間の毎週水曜日、時間帯は11:00~15:00とした。対象空間を見渡せる2階より行動観察を行い、20分間隔で滞在分布を記録した。また、利用者をランダムに抽出し、着席時刻、性別、年齢、グループ人数を記録した。適応行動を起こすたびにその内容と時刻を退席するまで記録した春学期の平均滞在人数は1190人、滞在時間中央値は103分で、21年と比較して、ともに2倍以上に増加していた。しかし秋セメは、628人、50分となり、21年より1.3倍増えた程度であった。21年度の適応行動は83%が着衣調節であった。適応行動は冬に近づくにつれて増加しており、12/22 には最大で0.96回になっていた。22年度は10月まで0.1回以下で、適応行動がほぼ見られなかった。冬に増加する傾向は見られたが、最大でも0.45回であった。原因として22年度は滞在者数が多く、ほとんどの席が占められており、自由な行動が心理的に抑制されたためと考えられる。いずれの年度も平均室温が下がるにつれて着衣量が上がっており、傾きの差は0.02で大きな差はなかった。 昨年度と比較して対面授業が増えたことで滞在人数と滞在時間は増えており、特に春セメの増加は顕著であった。適応行動の8割以上を着衣調節が占めており、外気温と室温の差が大きくなる冬に調節回数が増えていた。しかし、22 年の調節回数は21 年と比較して半減していた。滞在者数が増えたことでスペースのゆとりが減少し、着衣調節が阻害されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オフィスでの調査実施はできていないものの、座席を自由に選択できる空調空間における秋季から冬季にかけての適応の実態が調査できた。新型コロナウィルスの社会的蔓延の状況(年度)によって、空間の使われ方が大きく変わり、それが適応行動の特性にも影響を及ぼしていることがわかった。現在は社会の状況や働き方が変化しつつある時期であり、平常時の適応行動特性を知るには、時期として不適切と考えられる。ただし、このような時期特有の結果としてまとめていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるが、適応行動特性にも、普遍的なものと一定でないものがあることが見えてきた2021-2022の実測調査結果は、社会状況と空間の使われ方が大きく変わる時期のものであり、その特徴を抽出するという観点で分析をし直す。また、文献調査を通じてコロナ禍前に見られた特性との違いを整理し、環境適応行動への影響要因としてまとめる。
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