研究課題/領域番号 |
21K04383
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
鍋島 佑基 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (10738800)
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研究分担者 |
木村 竜士 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (90571810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デシカントローター / 吸脱着特性 / 建築設備 / 無線計測 |
研究実績の概要 |
本研究は回転するローター内部の温湿度計測を行うものである.計測を実現させるため,研究分担者はセンサーと基盤の再選定を行い,市販品の中で最も小型(幅3mm,長さ10mm,厚み2mm)のセンシリオン製温湿度計と,8点同時計測を可能とする薄型基盤を選定した.本基盤はZigbee通信によって無線化可能であることから,8chの温湿度計測を無線で行うためのコーディング作業を行った. 研究代表者は,作成されたセンサーの校正のために,恒温恒湿構内にて高精度温湿度プローブを用いた校正試験を行った.校正試験条件は温度20℃~55℃,湿度20%~95%の範囲であり,この範囲内における誤差特性を把握した.次に,センサーをデシカントローター内に埋設し,ローター内部環境計測を行うために通風試験装置のセットアップを開始した.通風試験装置は,二台の恒温恒湿空気供給装置をローター専用のカセットに接続して再生と除湿を連続的に行うものである.ローター形状は直径350mm,厚み200mmの珪藻土ローターである.センサーを埋設するためにローター側面からドリルで加工し,側面から75mmの地点にセンサーを固定し,予備試験を行った. 予備試験では,再生・除湿側の空気絶対湿度を14g/kgDAと設定し,40℃再生化で除湿量計測を行ったが結果の誤差が大きかった.これはローター側面にドリルで穴を開けた際,内部のコルゲートが崩れてしまい,風の流れを妨げているためであった.そこで再度,穴あけ加工と通風の確認を行ったところ,除湿再生量が一致したことから,本試験を開始できる状況となった. 現時点で,6種類のデシカントローターを入試した.ローターはそれぞれ,A型シリカゲル,ハスクレイ2種,メソポーラスシリカ,稚内層珪質頁岩,珪藻土である.次年度はこれらのローター内部にも小型センサーを設置し,除湿量を比較していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既往の研究において,ローター内部の温湿度計測の基礎技術は確立していたが,本研究では,ローター計測をより簡便にするために,IoT開発基盤を活用した多点計測に着手した.物流の都合で基盤の入手が遅れたものの,研究分担者は温湿度センサーの多チャンネル化と無線化を達成した.計測値は無線ユニットを介してパソコン内にテキスト形式で蓄積できるようになっている. 研究代表者は,研究開始後からデシカントローターの入手のために業者と交渉していたが,物流の問題で海外からの入手が困難な状況に陥っていたが,最終的には不要なローターを譲りうけることができたため,6種類の同形状のデシカントローターを入手することができた.デシカントローターは稚内層珪質頁岩(WSS),珪藻土,A型シリカゲル,ハスクレイ(塩担持あり),ハスクレイ(塩担持なし),メソポーラスシリカである.当初予定では,収着材ローターとB型シリカゲルについて計画していたが,これらについては未だ入手の目途はたっていない.しかし,学術的な成果を得るには十分な吸着材の種類が手に入ったため,まずはこれらを対象に研究を進めていくことにした. ローター性能評価装置について,当初は装置の問題から自作の加湿器を用いて送風湿度の制御を行っていたが,目標の実験環境を作成できていなかった.しかし,温湿度供給装置を2台そろえることができたため,実験条件の温湿度供給が容易に行えるようになった.次年度では同装置を活用してローター性能評価を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は入手した6種類のローターを対象に,除湿再生量の可視化に着手する.既に,珪藻土ローターについては,おおむね実験を終えている.実験環境は再生温度を35~55℃,処理空気の絶対湿度を14~20g/kgDA,再生空気の絶対湿度を12~14g/kgDAとする予定である.回転数は一時間に7~15回転,ローター内の風速は1.1m/secとする. それぞれのローター内部の温湿度環境を計測した後に,計測値の校正を実施する.校正後にローター内温湿度分布を比較し,材料の吸着特性が除湿再生過程に与えていた影響を分析する. 研究分担者は昨年度に継続して,無線計測システムの作成を行う.さらに,研究代表者が構築した応答遅れ補正手法をもとに,IoT基盤内で自動補正プログラムの構築について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では,市販のデシカントローターの購入,あるいは試作依頼をするために予算を計上していたが,不要なローターを貸していただけることとなったため,ローター購入が不要になった.このため差額が生じてしまった. 本年度も引き続き,B型シリカゲルローターなどの新たなローターを購入する際に,ローターあたり30万円程度かかると考えており,ローター購入費用として考えている.購入検討中のローターは収着材ローターとB型シリカゲルローターの2種である. また,デシカントローターの評価装置内に取り付けている高精度温湿度プローブは消耗品である.計測精度維持のため,これらのセンサーの買い替えにも用いる予定である(6万円/本×6本).
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