研究実績の概要 |
潜熱顕熱分離空調システムは消費エネルギー削減の観点から有力な手段として着目され,多くのシステムが提案されてきた.潜熱処理の手段としては,吸着材ローターを用いた除湿が一般的であり,すでに種々の吸着材・執着材を用いたデシカントローターの研究開発が行われている.近年のIoT技術の普及により,物理環境測定を無線通信で行えるユニットが市販されている.そこで小型センサーと無線通信機を活用しローター内部の温湿度分布測定システムを試作し,回転体内部の温湿度測定結果の補正方法を検討し,回転するローター内部の温湿度可視化を試みた. デシカントローター内部の可視化にあたって,ローター側面から穴あけ加工を施し,ローター各表面部分にセンサーを埋設した.センサーは中央部の温湿度を測定できるように,側面から約68mm,ローター表面から5mmー195mmの各5~8点埋設した.実験条件として,OAの設定温湿度は30℃, 52% (14g/kgDA),RAの温湿度については35℃, 40% (14g/kgDA)を基準に温湿度を変更して除湿量評価を行った. 実験によってローター回転方向における温湿度に応答補正を施し絶対湿度の分布を示した.応答補正によって求めた除湿・再生量は高精度センサーによる結果と概ね一致していた.そのうえでローターごとに除湿・再生量分布の比較を行った. ローターに関わらず除湿量のピークは回転角が0.36°近傍であらわれることが明らかとなった.また,再生側では再生量の最大値を示すのは再生開始から30°近傍であった.このことから,吸脱着量のピークはローターに関わらず概ね同じであることが分かった.一方で,再生において,最大再生量が持続する時間について,ローターごとに顕著な差が確認されていることから,吸着材の添着量が除湿量の発揮に影響を与えていることが推測される.
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