研究課題/領域番号 |
21K04389
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松原 康介 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00548084)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルジェリア / シリア / ソヴァジェ仮説 / ビドンヴィル / カスバ |
研究実績の概要 |
中東・北アフリカの歴史都市において、ギリシア・ローマ時代の都市計画遺構は、イスラーム期より今日まで継承されている都市内遺跡としてのヘレニズム基盤と位置付けうる。本研究では、その継承の様相を、住民による居住実践を中心にとらえ、(コロナ対応も念頭に)図面を中心とする文献調査から明らかにする。都市内遺跡であるヘレニズム基盤の継承の様相を、住民自身による居住実践を中心にとらえ、(コロナ対応も念頭に)図面分析を中心とする文献調査(既往研究も含む)から明らかにする。対象は、アルジェリア、レバノン、シリア、トルコの各都市と近傍の遺跡である(後述)。 本年度は、特にアルジェリアの都市研究を中心に進捗をみた。第一に、アルジェリア生まれの歴史学者マフード・カッダーシュの報告書に基づいて、植民地期カスバの空間構成を明らかにした。カスバの主要通りはヘレニズム基盤たるローマ時代の直線道路に起源があったが、「イスラーム都市」論の影響を受けたと思われるカッダーシュにおいて、それは明確に意識されているとは言い難く、研究の位置づけが確認された。第二に、CIAMによる1950年代のビドンヴィル調査に焦点をあて、スラム住民による居住実践の特徴を把握した。カスバの都市空間形成プロセスはビドンヴィルの空間形成のひな型と位置付けうるが、CIAMメンバーはそうしたスラムの空間構成を肯定的に評価し空間論として抽出していたことがわかった。第三に、同時期により建築的作品志向の強いプロジェクトを実現したフェルナン・プイヨンのアルジェ三地区の計画理念と実現プロセスを明らかにした。プイヨンの計画理念にはムーア建築の基盤としてのローマ建築にインスパイアされた柱廊や広場がみられた。独立期のアルジェのスラム政策の全体像が解明されると同時に、元スラム住民による居住実践が社会学者ブルデューによって記録され批判的に提示されていることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルジェリアを中心に十分な業績を出しており、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アルジェリアにおける研究のとりまとめをした上で、今後はシリア、トルコ、レバノンにおけるヘレニズム基盤の調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はコロナ対応として文献中心に実施する計画であったが、本年度はそれでも更に調査を控えたことが理由である。本年4月より一部の国の危険レベルが下がったことで、フランスにおける文献調査、および、レバノン等における現地調査も適宜実施したいと考えている。
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