研究課題/領域番号 |
21K04391
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 文夫 東京大学, 総合研究博物館, 特任教授 (20447353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近接性 / ポストコロナ / 空間デザイン / 距離 / つながり / デジタル / ディスクリート |
研究実績の概要 |
Covid-19によるパンデミックは、私たちの社会環境や人間関係にさまざまな影響を与えている。今後の社会の本質的な課題は、人間を離し隔てることではなく、人間どうしの「近接性」を再構築することにあると考えている。本研究は、文化人類学から発生した「近接性」の概念を「距離の近さ+つながりの強さ」によって再構築し、これをもとにポストコロナ時代の「人間と空間」のあり方を提起する。研究の流れとしては、コロナ禍における近接性の現状把握を行い、新たな近接性の概念構築を試み、従来の建築類型にとらわれない新しい空間デザインの方法を解明することを目標としている。当該年度においては、まず近接性の現状把握に取り組み、近接性の概念構築のための準備作業を行った。 「距離とつながり」の視点から各種の建築類型の空間状態を明らかにし、一方で「デジタルとディスクリート」の視点から実空間と情報空間における人間関係の状態を明らかにした。現在のコロナ禍で起きていることは、前者の空間状態に後者の人間関係を重ね合わせることであり、そこには元々の建築プログラムでは想定されなかった様々なズレが発生している。今後この「新常態」がどこまで定着するかはわからない。しかし、現在の利用状況の中から新しい空間デザインの萌芽を読み取ることができる。空間デザインに関わる近接性の指標をブレークダウンして設定すると、①人間距離/②人間密度は距離と密度に関わる指標、③空間規模/④配置形式は規模と配置に関わる指標、⑤利用動態/⑥機能分担は空間の使い方に関わる指標、⑦境界状況/⑧空間形態は連結と分離に関わる指標、⑨時間同期/⑩世界設定は時間と空間の基本設定に関わる指標である。以上にあげた指標群によって、多様な近接性の現状を把握することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍における近接性の現状把握の作業は順調に進んでいる。ただし実地調査による情報収集が難しいので、入手できる資料をもとに近接性の概念構築につながる考察を先行させた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、2022年度に近接性の概念構築を行い、2023年度は空間デザインの方法論の解明に進む。 まず「近接性の概念構築」においては、2021年度の現状把握から導き出された近接性の指標について、具体的な建築事例に対して実地調査による検証を試みる。指標群の検証を通して全体の関係性と構造を明らかにし、近接性の概念構築に結びつける。この段階で留意すべきは、コロナ禍の前後の変化を参照しつつ指標の変動範囲を把握することであり、また施設全体の対応策であっても空間レベルに分解して内容を精査することである。 次に「空間デザインの方法論の解明」においては、近接性の概念構築で整理した指標群をもとに、空間デザインの方向性を検討する。デザインの方法論とするために、集合的に得られた知見を構造化する。第一に空間的な連続性(人間・空間・建築・都市・地域という面的な広がり)をもつこと。第二に時間的な連続性(過去から未来への短中長期の持続可能性)をもつこと。第三にリアル/バーチャルの連続性をもつこと。そのうえで「連結可能性と分離可能性」を参照して近接性を操作可能な概念と位置づけ、「つながり」にもとづく空間デザインの方法論を導き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍で国内外の実地調査が実施できなかったため。 2022年度には実地調査を行う予定である。
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