研究実績の概要 |
厚生労働省は重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で, 自分らしい生活を最後まで続けることを可能とするために,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を推進している.この政策の背景には日本の急速な少子高齢化がある.日本の総人口は2008年の1億2,808万人をピークとし,現在は減少傾向にある.介護保険受給者の約9割が75歳以上であることから,75歳以上人口に着目すると,日本全体の傾向として,75歳以上人口は2054年頃にピークを迎え,その後,減少していくと推計される.そのため,今後,高齢者福祉サービスや介護施設,医療などの需要がさらに増加することが想定される.しかしながら,高齢化の状況は,地域によって大きな差がある.また各市町村がもつ社会資源も異なる.そこで,市町村ごとの高齢者人口動態からみた,適切な高齢者施設の配置を計画することが望ましい.本年度の研究計画として75歳以上人口動態による全国市町村の分類と推計開始年の特定を計画した。具体的には,各市町村における75歳以上人口がピークとなる年を特定し,各分類の分布傾向について考察する.これにより,全国市町村の75歳以上人口の状況を総覧することができる.また高齢者施設の需要最大期を特定することができる.これらは各市町村における適切な高齢者施設の配置計画に資する.昨年度の集計について、再現性を高めるための再集計をおこなった。その結果、全国市町村の75歳以上人口動態は10パターンに分類することができること、国全体での75 歳以上人口の第一ピークは2030 年であるのに対して, 同年には最多の40.31% の基礎自治体が同人口ピークを迎えるものの,2020 年ですでに14.45% の基礎自治体が同人口ピークを迎えているなど, ピークが分散していることが明らかとなった。
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