研究課題/領域番号 |
21K04397
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石垣 文 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (60508349)
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研究分担者 |
加藤 悠介 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80455138)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グループホーム / 既存住宅 / 福祉転用 / 社会的養護 / 建築行政 |
研究実績の概要 |
障害者福祉および児童福祉における居住型の施設を考えると、ノーマライゼーションの進展や入所者のケアの個別性確保等を背景に、一般家庭に近い生活経験を得やすい「グループホーム」の重要度がますます高まっている。しかしグループホームの開設にあたっては、建築物の確保の困難さがグループホーム設置の障壁の一つと指摘されてきている。一方で、住宅ストックの利活用が社会的な課題となっている現在、既存住宅の転用という視点からグループホームの建物確保を検討することが求められている。そこで22年度は、既存住宅のグループホーム転用における建築行政手続きに関し、先駆自治達に関する二次調査を行った。また、グループ転用の先駆事例における家族確保・活用に関するケーススタディを行った。結果を以下にまとめる。 ・既存住宅のグループホーム転用後も基準法上住宅として扱う独自基準を設ける自治体への調査からは、障害者用および児童用グループホーム(地域小規模児童養護施設、自立援助ホーム、里親ファミリーホーム)に関する法的に明確な位置づけがないこと、事業者(里親、児童養護施設)からの要望、措置児童の増加によるグループ運用の必要性を加味し、自治体判断による運用が行われていることが把握された。また平成28年の児童福祉法の改正において、社会的養護に家庭と同様の環境における養育の推進が法律に明文化されたこと、更には児童用グループの推進のため賃貸住宅の活用事例が増加していることも、住宅として扱うことに影響したことが把握された。 ・グループ転用の先駆事例調査を通じ、グループホーム事業に対する公的な家賃補助制度や民間の補助事業の充実、社会福祉事業への支援に対する家主および不動産業者の関心の高まり、事業者の地縁を通じた支援、の三点が既存住宅の確保・活用の背景にあることが捉えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、全国のグループホームの家屋に関する調査を実施する予定であった。しかし建築行政への二次調査の必要性が生じたこと、また、既存住宅を活用したグループホームへの事例調査を実施したのちに全国的な状況を把握するための調査票を作成することが合理的であるとの判断に至り、調査の手順を変更したため、当初の計画からは遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、既存住宅を活用したグループホームを先駆的に運営してきた施設に対する調査を更に行い、家屋の確保方法や契約方法および修繕・改修状況等の詳細を把握する。また、取り組みの中で家屋確保や活用方法の変遷やトラブル等を網羅的に捉えることで、家屋確保・活用に関する有効な方法論を仮説的に考察する。また、既存住宅の福祉転用促進について、設計事業者および不動産業者の協議会等が実施する事業のしくみおよび実態を調査する。次に既存住宅を活用している全国のグループホームについて、建物の概要、家屋の確保方法、改修・修繕状況等を整理し、活用の実態をデータベース化する。またそこから既存住宅の確保・活用策を類型化する。以上を総合的に考察し、既存住宅活用における課題を整理する。そこから既存住宅活用の手法案を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響および研究計画の変更により調査の一部が未実施となったもとにより、次年度に繰り越し分が生じている。繰り越し分は、23年度に行う調査で使用する。
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