研究課題/領域番号 |
21K04406
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
野澤 英希 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (80825612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 廃校活用 / 少子高齢化 / 中心市街地 / ニュータウン / 中山間地域 / 空き家活用 / 関係人口の増加 |
研究実績の概要 |
本研究は、廃校などの建築ストックにおいて、①再利用方針の立案のフロー、②地域活性化に貢献できる施設とするためのフロー、③施設が継続的かつ活発に利用されるためのフローを明らかにすることを目的としており、令和3年度に実施した研究の成果は主に以下の3点である。 ・愛知県瀬戸市の中心市街地に位置する小学校5校及び中学校2校が2019年に廃校となり、うち4校の再利用が未だ行われていない状況となっている。この4校の再利用に向けて立地する地域属性の特徴を把握し、地域住民が持つまちと廃校への意識アンケートを実施した。また、利活用に向けた活用方針の現状を把握し、学区による協議進度の差異についてもある程度把握することができた。思うように協議が進まなかった要因としてCOVID-19により行動が制限されたことが考えられる。 ・同じ瀬戸市の中心市街地からほど近い菱野団地においても小学校3校を1校に統廃合する予定である。菱野団地は昭和40年代に入居が始まったニュータウンであり、現在は少子高齢化が進行し空き家も多く、団地内の商業施設の撤退によりにぎわいの低下が課題となっている。市・地域住民・本学を含めた学生と協働で、中心部の商店街の空き店舗を活用した居場所を作りと様々な利用ができる家具をDIYワークショップにより制作した。 ・愛知県の中山間地域である設楽町において、町と地域おこし協力隊が主催する中山間地域の関係人口増を目指した空き家を宿泊施設とするリノベコンペに参加し、更に町・地域住民・本学を含めた学生・企業などと協働しDIYリノベーションを行った。リノベコンペ参加者とDIYリノベーション参加者に参加の動機や中山間地域に対する意識などについてのアンケートを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既往研究において東海4県を廃校の調査対象地として調査・分析していたことから、当初、本研究においても東海4県の廃校を対象として調査を行う予定であった。しかし、COVID-19により県外への移動が禁止されると言った大幅な行動制限により、やむを得ず調査対象を県内に限定し、かつ大学からアクセスのし易い(大学による出張制限があったため)下記の2エリアに調査対象地を絞ることとした。 一つ目の選定地域は、愛知県瀬戸市とした。政令指定都市である名古屋市の通勤圏であり、古くは瀬戸物の産地として発展したまちである。現在は全国に多く存在するベッドタウンとなっており、研究成果の汎用性の高さから鑑み有用であると判断した。 2019年に中心市街地に位置する小中学校7校が廃校となり、また近年中にニュータウン内に位置する小学校3校も廃校となる予定である。古くからの中心市街地とニュータウンのそれぞれの廃校活用プロセスの把握が期待できる。令和3年度は、対面による会議開催の制約から活用に向けた議論が思うように進まなかったが、地域に対する意識調査アンケートを実施した。 二つ目の選定地域はいわゆる中山間地域の愛知県設楽町とした。もともと建築ストックの活用が難しい中山間地域であり、またCOVID-19の影響などもあり、廃校が活用される見通しが立たなかったことからやむを得ず空き家の活用を調査対象とすることとした。空き家活用コンペに参加し、またその後のDIYリノベーションへ継続して参加(延べ10日程度)した。令和3年度はこれらの参加者を対象に中山間地域に対する意識調査アンケートを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
瀬戸市の中心市街地とニュータウンに位置するそれぞれの廃校利活用プロセスの特徴について令和4年度も引き続き行うことを予定している。学区により活用に向けた協議の進度も異なることから、それらの要因の把握も予定している。なかなか収束しないCOVID-19による調査への影響が懸念材料である。 また、菱野団地の廃校活用の地域属性の基礎資料として、団地の抱える諸課題の把握を令和3年度から実施している「空き店舗を活用した居場所づくりワークショップ」を通して継続して実施する。令和4年度は新たな居場所づくりとして「団地内の中央広場を対象とした居場所づくりワークショップ」を実施する予定である。市・地域住民・本学を含めた学生と言ったそれぞれの立場の視点から見た課題や意向などについてアンケート調査等により把握する。数年内に行われる予定の廃校活用の基礎資料となることが期待できる。 設楽町においては、令和3年度に引き続き「空き家活用のDIYリノベーション」へ継続参加するとともに、当該施設が令和4年度6月に宿泊施設として利用が開始されることから、以降は利用者へのアンケート調査を行い、中山間地域における建築ストック活用の課題や地域への愛着度、また関係人口増や都市と中山間地域の2拠点居住などの意識などについて把握する。 また、宿泊施設に付随する建屋のDIYリノベーションや田畑の活用などの参加型プロジェクトの継続も予定されており、更にトヨタ自動車もメンバーとして加わったことから企業による中山間地域の活性化の視点からも調査・分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
10,037円の未執行分はCOVID-19の影響などにより出張が制限されたことによる。今年度、旅費として使用する予定である。
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